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2chの「MC・催眠系総合スレ」をまとめてます。(作りかけだから見にくい)
幼馴染と妹と - 2chMCスレッド | 彩民のMC小説

幼馴染と妹と



(前編)
(後編)


前編


蛍光灯で照らされた部屋の中、俺は後ろから瑞希を抱きかかえていた。
左手は服の上から控えめの乳房を揉み回し、
右手はスカートの中に侵入して、清潔なショーツの上から、感じやすい箇所をじっくりと撫で回す。

「はあ、あふぅ……」

発情した少女の声が、俺の耳をくすぐった。
まだ児戯のように触れているだけなのに、もう感じ始めているのは、こいつがエロいからだろう。
呼吸を乱して声を漏らし、目を細めて俺の愛撫にとろけている。
俺の腕の中では黒のツインテールの髪がぷらぷらと揺れていて、
その持ち主の色っぽい吐息と、俺を呼ぶ切ない喘ぎ声が鼓膜を叩いてくる。

「ゆ――祐ちゃあん……」
「静かにしろ、瑞希。下に聞こえる」

俺は左手を瑞希の服から引き抜くと、細く華奢なこいつの顎にやり、その顔を横に向かせた。
高ぶる期待に興奮の色を隠せない瞳を見つめて、その唇を自分ので覆う。

「はふ――ん、んんっ……」
わざと舌を入れずに、息を止める感じで口だけ塞ぐ。
唇を引っつけ、軽く触れ合わせる無邪気なキス。
そうしている間にも、俺の右手は瑞希の下着の隙間から中へと忍び込み、
既にじっとり湿り気を帯びる秘所をざらざらとこすり上げていた。

欲しくて堪らないのか、スケベだな。

俺の指は遠慮の欠片もなくこいつの肉をかきわけ、汁のしたたる肉壷を責めたてた。
何度も犯されて俺のモノを受け入れた、卑しい雌の性器。
そこにかすかな愛着を感じながら、俺は瑞希の秘所を丹念にかき回した。
熱い肉が俺にまとわりつき、指の関節をキュウキュウ締めつけてくる。

「んん、んむぅっ……!」

声を出せないもどかしさに瑞希は軽く暴れたが、それしきで解放されるはずもない。
それに嫌がってみせるのは表面だけで、指に絡むいやらしい肉のスープと
うっとりしたこいつの顔は、明らかな歓喜を示していた。

「ん、んん……」
ゆっくりと口を離し、互いを繋ぐ細い唾液の架け橋を二人で観察した。
こいつは俺の視線など意にも介さず、いつも通りの顔で笑う。
まったく、何がそんなにおかしいのやら。俺は指を瑞希の中で激しく往復させた。

「ふあっ……ふあああぁっ !!」
「イカせてやるよ、瑞希」

耳元に唇を近づけて、冷たい声でぼそりとつぶやく。
もう一度黙らせるために指を口内に突っ込むと、瑞希は喜んでそれをなめ回してきた。
俺の右手が瑞希の陰核をつまみ、指の腹で敏感な豆をこすり立てる。
すっかり肥大した突起を弾くたびこいつの体が跳ね、指が入った口の端からよだれが漏れた。

その一方で俺の口は、喘いで揺れる黒髪を押しのけ、
瑞希の首筋に自分の唾液をべたべた塗りたくっていた。
瑞希は全身が性感帯にでもなったかのように理性を無くし、俺に抱かれてよがり狂う。
愛だとか慕情だとかいった立派なものではなく、ただ肉欲だけがこの女を支配していた。

「ふむっ、んむううぅっ…… !!」

そして、ひときわ大きく瑞希が跳ね、弛緩した体を俺にぐったりもたれかからせた。
目は開いているが視線は虚ろで、ぼんやりと宙を見上げるのみ。
指が抜かれた口からはだらりと唾液がこぼれ、服と肌とを濡らしていく。
俺はといえば、腕の中の少女を無事にイカせた達成感に、満足の息を吐いていた。

「――はあ、はっ、ふうぅ……」

聞こえるのは少女の荒い呼吸だけ。
心地よさげにそれに聞き入る俺の耳を、息も絶え絶えの瑞希の声が撫で上げた。

「ゆ、祐ちゃん……」
「何だ?」
「続き、しないの……? 祐ちゃんも、一緒に……」
「いや、無理だ。下にお袋がいるし、それにうちはもうすぐ晩飯だから」

そっけない返事に、軽い失望の色を顔に浮かべる瑞希。
頬を朱に染めて俺を求めてくるその表情は、まさしく一人の女のものだったが、
小さな胸も細い手足も、可愛らしい童顔も、その淫蕩な瞳の色には少しばかり似つかわしくなかった。

「そうヘコむなって。今度ゆっくりしてやるよ」
その俺の言葉に、瑞希は真っ赤になってはにかんだ。

事実、俺の股間では張りつめた息子がたけだけしい円錐を形作り、若々しい性欲を持て余していた。
せっかくだし口で抜いてもらうかな、と思ったそのとき、
残念なことに階下から夕飯を知らせる母親の声が聞こえてきた。
もうちょっと早かったら、瑞希もイキそこねていたことだろう。
まあいいや。今度お袋がいないときにたっぷりするとしよう。瑞希と顔を見合わせて笑う。

瑞希も絶頂の高揚が収まったらしく、そっと立ち上がって俺に言った。
「ありがとう。じゃあ私、そろそろ帰るね」
「ああ、気をつけてな。また明日」
「気をつけるも何も、私の家、すぐそこじゃない」
決まりきった俺の返事に小さく笑い、部屋を出て行く。

不思議と機嫌がいいうちの母親に見送られ、瑞希は斜向かいの自宅へと帰っていった。
この様子だと、いっそ開き直って本番行為に及んだ方が良かったかもしれない。
晩飯のカレーライスを食いながら、瑞希んちの夕食は何だろうかと、
ついどうでもいいことを考えてしまう俺だった。


俺は中川祐介、ごく普通の男子高校生。

先ほどまで俺の部屋にいたあの少女は森田瑞希という、近所に住む腐れ縁の同級生だ。
平たく言えば幼馴染ということになるだろうか。
もっとも最近は恋人としてつき合い始め、肉体関係を持つようになった。
あいつは学年一のチビで童顔、しかもロリータ丸出しの幼児体型なのだが、
小さい時からずっとあいつを見てきた俺にとって、そんなのは些細なことだった。
内気ですぐ真っ赤になるくせに、抱いてやると思いっきり乱れて、俺を求めてくる瑞希。
ベタベタと俺に甘えてきて、意外と独占欲の強い、可愛らしい瑞希。
俺はそんな瑞希が大好きだったし、あいつもこんな俺を好きでいてくれている。
ささやかな幸福を日々感じながら、俺たちは平凡な学生生活を送っていた。
そう、あの日までは。

あの日、あの時までは、俺は退屈ながらも幸せな毎日を送る、ごく普通の男子高校生だったんだ。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 

その日の夕方、俺は瑞希と下校途中の通学路を歩いていた。
瑞希は気弱な性格で、口数も少ない。俺も幼い頃から無口だったから、
二人っきりで歩いていても静かなものだ。
いつもならよく喋る友人が一緒なんだが、今日はたまたまいなかった。

「雨、降りそうだな」
「うん」

空を見ると、嫌な灰色の雲が広がりつつあった。ひと雨くるかもしれない。
今歩いているのは道路脇の歩道で、二人すれ違うのがやっとの狭い場所だ。
人も車も大して通らないし、車道との間に柵もガードレールも設けられていないから、
ついつい油断して道路にはみ出してしまうこともある。
まあどうせ、交通量なんてほぼ皆無だから、それで危ないというわけでもなかったが。
車道の向こう側には住宅の塀が並び、そのところどころが、スプレーで落書きされていた。
俺も瑞希も毎日通る、至って普通の道だ。

隣にいる瑞希の顔をちらちらのぞきつつ歩いていると、
ふと、その俺の肩を瑞希がトントンと叩いてきて、言った。
「ねえ、祐ちゃん。前、前見て」
「ん? なんだよ」

その言葉に顔を上げて前を見ると、その狭い歩道の真ん中を、一人の男が歩いているのが見えた。
こちらを向いて、ゆっくり近づいてくる。互いの距離は二十メートルほどだろうか。
よく見るとその男はまだ若く、俺たちと同じくらいの歳の少年に思われた。
制服ではないがそれに近い、飾り気のないワイシャツとスラックスといういでたちである。
うちの生徒ではないし、知り合いでもなかった。まったく見覚えのない少年だ。
それなのに瑞希がわざわざ俺に注意を促したのは、そいつがかなりの――いや、
俺も思わず目を見張るほど、完璧な優男だったからだ。まさに絶世の美男子といってもいいだろう。
ちょうど彫刻か絵画のような、人間離れした美しい顔が頭部に張りついていた。

隣を見ると、瑞希も俺と同様、ぽかんとした顔をして、そいつの美貌に見とれているようだった。
「すごく綺麗な人だね。祐ちゃん」
「ああ……でもあんまりジロジロ見るなよ。失礼だぞ」
「う、うん……」

道路の脇の狭い歩道で、俺たちとその少年はだんだんと近づいていった。
十五メートル、十メートル、五メートル。
非常識なまでの美しい顔立ちが、もはや至近に迫っていた。
道が狭いため、二人並んで少年とすれ違うことはできない。
瑞希は何も言わず俺の後ろに回り、そいつのために道を空けた。

少年は俺たちに一瞥を投げると、俺の横、ごく間近のところを歩いていった。
俺も瑞希も何も喋らず、無言で少年の隣を通り過ぎた。
通り過ぎたはずだった。
しかし、次の瞬間。俺はいきなり背後から聞こえてきた悲鳴に、平静を失った。

「きゃあっ !? な、なに !?」
「瑞希っ !?」

聞き慣れた幼馴染の声に後ろを振り返ると、
その少年が瑞希の背後に回り、両腕を押さえつけているのが見えた。
瑞希の持っていたカバンが歩道に落ち、ドサリと乾いた音をたてた。

「失礼。でも、できたら暴れないでくれると嬉しいね」
少年は後ろから瑞希の腕を押さえ、完全に動きを封じている。
不意の暴行に彼女は大騒ぎしたが、小柄な瑞希のこと、その抵抗にもさしたる意味はない。

「おい! 何してんだ、そいつを放せ!」
俺は声をあげ、瑞希を助けようと少年に飛びかかった。
いや、飛びかかったつもりだった。

それなのに、どういうことだろうか。

「おっと、ストップ。君は動けない」
その言葉と共に少年が片手を突き出すと、別に触れられているわけでもないのに、
俺の体がその場にピタリと停止してしまったのだ。
飛びかかろうとする不自然な姿勢のままで、俺は立ちすくんでいた。

「な――何だよこれ !? なんでだ、どうなってんだ !?」
自分の体が動かない。まるで金縛りにあったかのように、自分の意思では動けなくなっていた。
手も足も自分のものではないみたいに、ぴくりとも動かせなくなっている。
辛うじて動くのは首から上、つまり顔だけだ。
こんなことはありえない。何をされたわけでもないのに、体が固まってしまうなんて。
信じられない現象に、俺はうめきながら少年をにらみつけることしかできなかった。

その少年は、にこにこ笑って俺を見つめていた。
男でさえ見とれるほどの美少年だが、今の俺はこの美貌に、恐怖を感じ始めていた。

細く形のいい唇が、透き通った声をつむぐ。
「どうだい、びっくりした? ほら、全然動けないでしょ」
「お前、一体何をした !? 瑞希を放せ、この野郎!」
「放してあげるとも。僕の用事が終わったら、すぐにでもね」

決して低くはない、どこか中性的な声。
思わず聞きほれてしまいそうな心地よい響きだが、これもまた、どこか人間離れしていた。 
誰だこいつは、一体なんだ。なぜ瑞希に乱暴する? なんで俺は動けない? 何をされてるんだ?
こいつは誰か、何者なのか。ひょっとして魔法使いとか超能力者なのだろうか。
馬鹿げた問いが俺の脳内を飛び回り、得体の知れない危機感を煽り立てた。

「ゆ――祐ちゃ……!」
「瑞希、待ってろ! 今、俺がっ……!」
「それは無理だね。君は絶対に動けないもの」

青ざめる瑞希を必死で励ます俺と、にこやかに微笑む少年。
こいつの言うとおり、俺は全く動けず、瑞希を助けることもできなかった。
だが、目の前で大事な女が危ない目に遭っているというのに、簡単に諦めるわけにはいかない。

「瑞希、瑞希っ!」
「ちょっと落ち着きなよ。落ち着いて、僕の話を聞いてくれないかな?」
「黙れ! 瑞希を放せっ!」

少年は首をすくめ、やれやれとつぶやいた。そんな仕草でさえ、たまらなく魅力的な男だった。
「まあ聞いてよ。僕は何も、君を取って食おうってわけじゃない。
 ただ君に、ちょっと僕の手伝いをしてほしいだけさ」
「誰がそんなことするかよ! 瑞希を放せ!」
「祐ちゃん……」

こいつの意図など知りはしないが、
いきなり道端で人に襲いかかってくるようなやつに、協力できるはずがない。
俺は再度動かない手足に力を入れたが、
やはり俺の首から下は石にでもなってしまったように、ぴくりとも動かなかった。

「中川祐介君。君の経歴や性格、家族構成については調べさせてもらったよ。
 どうだい? 君は今の自分に満足してるかな?」
「…………」

俺は叫ぶのをやめ、じっと少年をにらみつけた。
なんだこいつは、警察か? いや、どう見ても違う。私立探偵……にも見えない。
わずかな思考の末に俺が出した答えは、「謎の秘密組織のメンバー」なるものだったが、
自分でも馬鹿馬鹿しい話としか思えなかった。漫画やテレビの見すぎだろう。
だが事実として、俺と瑞希は現在、この謎の少年によって拘束されている。
この辺はいつも人の通らないところで、運良く誰かが通りかかって
人を呼んできてくれるというのも、あまり期待できそうになかった。

くそ、わけのわからないことばかり口走りやがって。
さっさと俺たちを解放して、どっか行きやがれ。
視線に憎悪を込める俺だったが、こいつには無意味だった。

少年はこちらを向いて楽しげに、にこやかに語りかけてくる。
「両親、学校の先生、そして周りの友達。
 その中には気に入らない人だっているだろうし、喧嘩することだってあるだろう。
 でも、もしそうした人たちを自分の自由にできるとしたら、
 周囲の人々を自らの意思で好き勝手に操れるとしたら、君はどうする?」
「お前、何言ってるんだ? そんなアホくさい話――」
「どうする?」

俺の言葉を遮って、やつは同じセリフを繰り返す。
なんなんだよ、こいつは。頭がイカれてるんじゃないだろうか。
なんで俺が、こんな異常なヤツと会話しなきゃならんのか。
怒りを通り越して呆れつつも、依然として俺の身体は自由にならなかった。

「自分で言うのも何だけど、僕はそこそこ芸達者でね。
 ちょうど今、君にこうやってるように、いろんなことができるんだ。
 わかりやすく言うと……そうだね、魔法使いとでも思ってくれたらいいよ。
 ミステリアスだけど、どこかお茶目で憎めない、楽しい楽しい魔法使いさ」
「……で、その魔法使いサマが、俺に何の用だ?」
「僕は今、人間の体と心について、いろいろ研究していてね。
 その一環として、ちょっと君に協力してほしいんだよ。
 悪いようにはしないから、ぜひ僕につき合ってくれないかな?」

顔に笑顔を張りつかせたまま、少年は言った。
だが、その言葉に薄気味悪いものを感じた俺は、全力でこいつを拒絶した。

「誰が協力なんかするか。早く俺たちの前から消えろ」
「いやいや、そんなこと言わないでよ。君にとっても決して悪い話じゃない。
 僕の魔法の力を分けてあげて、あれこれ実験台に――おっと失礼。
 とにかく君にも、僕と同じようなことができるようになってもらおうと思ってるんだ。
 これはホントにすごいことなんだよ。何でもできる、万能の力さ。
 親でも先生でも、誰だって言うことを聞かせることができて、誰も君には逆らえなくなる。
 どうだい? すごく魅力的なお話でしょ?」

……ちょっと想像してみてほしい。
いきなり怪しげな自称魔法使いの少年が自分の目の前に現れて、
自分を無理やり動けなくしたうえに、大事な女を人質にとって、
「協力しろ、その代わりに魔法の力を分けてやるから」なんて言ってきたら、どうする?
今、俺の心の中では、困惑と疑念と、こいつに対する反感が渦巻いていた。
誰がこんなやつの言うことを聞けるか。うなずいたら即、魂を持っていかれるわ。
そりゃ俺だって、普段の生活にまったく不満がないと言えば嘘になるが、だからって
こんな怪しさ全開のうさん臭いやつの力を借りてまで、好き勝手しようなんて思わない。
俺とこの少年の会話は、どこまでも平行線だった。

「そんなものいらん。いいから俺たちの体を動くようにしろ。それで瑞希を放せ」
「うーん。君は無欲だなあ、困ったね……。まあ、だからこそ君を選んだんだけどさ」

俺の目をじっと見つめて少年が言う。
「ねえ、どうしてもダメかい? もう一度よく、じっくり考えてみてよ」
「断るっ! 早く俺と瑞希を放せっ! 何度聞いても無駄だ!」
「ふむ、にべもなしか……残念だよ」

すると少年は軽くため息をついた後、一転、鋭い視線で俺を射抜いた。
人をゾクリとさせる、何よりも冷えた黒の瞳だ。
俺は恐怖のあまり、喉まで出かかった罵声を飲み込んでしまった。

「じゃあ、こうしようか」
視線を俺から手元の瑞希に移し、少年が言う。穏やかだが、冷酷な声だった。
「僕の言うことを聞いてくれたら、この子――森田瑞希さんを解放してあげよう。
 でも、君が僕に協力してくれなかったら、瑞希さんは……そうだね。今、ここで消えてもらおうか。
 どう、この取り引きは? 単純でわかりやすくて、それにとっても効果的でしょ」
「くっ……!」
今度は人質の瑞希を使い、俺を脅迫してくる。
なんだこいつは。いったい何なんだ。いったい何をしようってんだ。
わけもわからず危機的状況に直面させられ、俺はうめくことしかできなかった。

「ゆ、祐ちゃあん……」
見ると、瑞希は恐怖に青ざめ、ぼろぼろ涙を流していた。
人一倍臆病な瑞希が、いきなりこんな異常な状況下に放り込まれたのだ。無理もない。
幼馴染の少女の泣き顔が、俺の心を激しく揺さぶった。
もしこいつに何かあったら。こいつを失うことにでもなったら。
そんな懸念を抱いてしまうほど、この少年の声は冷たかった。
こんなイカれたやつなら、本当に今、ここで瑞希に危害をくわえかねない。
とにかくここは、言うことを聞いておかなくては。

俺はかすかに震える声で言った。
「わ、わかった……俺にできることなら何でもやってやる。だから瑞希には、手を出すな」
「祐ちゃあん……ごめん……」
「泣くなって。お前が悪いわけじゃないんだから」
悪いのは全部この野郎だ。瑞希を泣かせやがって、絶対許さねえ。

「うん、わかってもらえたようで嬉しいよ。ありがとう」
俺の答えに、にこにこした顔でうなずく少年。
だが俺は、こんなやつに従う気は欠片もなかった。
今は油断させておいて、何とか隙を見つけて逃げ出すなり、反撃なりするつもりだった。
魔法使いだか何だか知らないが、見てろ。瑞希の安全さえ確保できたら、すぐにでも――。

しかし、少年の次の言葉を、俺はとっさに理解できなかった。
「ところでさっきも言ったけど、僕は多芸でね。ある程度なら、人の考えてることがわかるんだ」
「……なに?」
「面従腹背、か。君は嘘をついたね。僕は嘘が大嫌いなの、知ってるかな?」

澄んだ湖水のようなその声は、どこまでも暗く、冷たかった。
聞くだけで俺の顔から血の気が引き、背中に冷ややかな何かが這い上がってくる。

「君はもうちょっと話がわかる人だと思ってたんだけど、残念だよ。
 仕方がないから、やっぱり君には一回、壊れてもらおうと思う。
 そうした方が、僕にとっても都合がいいしね」

そう言うと、少年は羽交い絞めにした瑞希の体を手放し、軽く突き飛ばした。
歩道から、そのすぐ隣の道路へと。
「きゃあっ !?」
普段はろくに車も通らない、通学路の脇道だ。
そこへ足を踏み入れたからといって、何がどうということもない。そのはずだった。

だが、そのときだ。一台のトラックが道路を突っ走り、こちらにやってきた。
引越し社の車で、側面には明るい感じの動物のイラストが描かれていた。
一車線の狭い道路を、トラックは何かに急き立てられているかのように、猛スピードで走ってくる。
そしてその道路の真ん中には、当然のように、今押し出されたばかりのツインテールの少女がいた。

瑞希は動かない。驚いて硬直してしまっているのか、それともあの少年に動けなくされたのか。
道路に突っ立ったまま、自分に向かって接近してくるトラックを見つめている。

まずい、ここままじゃ――!
俺は恐怖を感じて、喉から声を絞り上げた。
「瑞希ぃっ! 逃げろぉっ !!」

その叫びに、瑞希が首だけを俺に向けて叫び返した。助けを求めて、俺の名を呼んだ。
「祐ちゃ――」

だが俺は相変わらず微動だにできず、手を伸ばすことさえできない。
動けない俺の目と、同じく硬直した幼馴染の瞳が合った。
秒単位でしかない、ごくわずかな時間だが、確かに見つめ合った。
トラックはそのままブレーキ一つ踏まず、瑞希に向かって突っ込んできて――。

音は、聞こえなかった。

無音の世界の中、小柄な少女の体が跳ね飛ばされるのが見えた。
手を伸ばしたまま、空中でくるくると、冗談みたいに回転しながらはね飛んでいく。
俺はその一連の動きを、目の前の情景の全てを、コマ送りのように見届けていた。
一秒が数十に分割された静寂の世界では、全ての思考と感覚が鈍くなっていた。
ぶつかられて、飛んで、回って、落ちた。

音の消えた静かな空間で、唯一聞こえてきたのは、よく透るあの少年の声。
「いやあ、よく飛んだねえ。いいものを見せてもらったよ。
 僕に逆らうとどうなるか、これで君にもわかってもらえたかな?
 今日はもう帰るけど、さっきの話、ちゃんと前向きに考えておいてね」

その言葉と共に、少年は消えた。
その場から消えるように、まるで最初からいなかったかのように消え失せた。
あるいは、俺がやつの姿を認識したくなくなっただけかもしれない。

「…………」
ようやく停止したトラックの、少し後方。
道路の脇、コンクリートとアスファルトの境に「それ」が転がっていた。
もう二度と動かない、ただの肉と骨の塊。
俺はその物体を、呆けた視線で眺めることしかできなかった。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 

……瑞希が死んだ。
それも俺の目の前で車に轢かれるという、無残な死に方で。

悪魔のように恐ろしい笑みを浮かべ、瑞希を突き飛ばしたあいつ。
高速道路でもないのに猛スピードで迫りくる、無慈悲な暴走トラック。
死の恐怖におびえ、必死に俺の名を呼び、助けを求める少女。
そして、その瑞希を助けるどころか、動くことさえできずに突っ立っていた俺。

いつまでも脳内で繰り返される惨劇の記憶が、ひたすらに俺の心を痛めつけていた。
あいつの通夜にも葬式にも行ったはずなのに、その情景がまるで思い出せない。
俺は瑞希の親に謝ったのだろうか。
大事な幼馴染を、恋人を救えなかったことを詫びたのだろうか。
あのとき誰が俺と会話して、俺が何を喋ったのか、全く思い出せなかった。

瑞希を殺したあいつ、あの少年はすぐに捕まると思っていたのだが、
事態は俺の期待をことごとく裏切った。
目撃者は俺だけだというのに、その俺の証言が、なぜか警察にはろくに相手にされなかった。
轢いたトラックの運転手も、「突然、少女が飛び出してきた」と繰り返すだけで、
あの少年の姿をまったく見ていないという。
しまいには、俺が瑞希を突き飛ばしたのかとさえ疑われる始末だ。
幸いにも俺が罪に問われることはなかったが、あれからあの運転手がどうなったかは聞いていない。
そもそも俺はトラックの運転手などどうでもよくて、ただあの少年のことが知りたいだけだった。
あいつが瑞希をトラックの前に突き飛ばして、殺したんだから。

それなのに、憎むべき相手は忽然と消え失せ、手がかり一つ残っていない。
無常な現実に俺は何もできず、まさに生ける屍と化して無為の時を過ごしていた。
親に怒鳴られてしぶしぶ学校には出かけたものの、自分が誰なのかも希薄になっていて、
慰めのつもりか、俺に明るく話しかけてくる友人たちも、ただ鬱陶しいだけだった。

「…………」

授業中ぼんやりと教室を見回すと、俺の席のすぐ近くに、誰も使っていない机と椅子があった。
クラスの中にできた、不自然な隙間。それが誰の席かは、俺が一番よくわかっている。
机の上には、花一つ置かれていなかった。あいつの存在など、所詮その程度だということか。
幽鬼のごとくぼんやりする俺に、教師が注意してきたが、それも些細なことだった。
逆らう気も起きない。泣き喚く気にもなれない。ただ絶望と諦観だけが俺を支配していた。

昼休みも何も食わず、椅子に座ってただぼんやりと虚空を眺めるだけ。
若く健全な体が訴えてくる空腹感に、ふといつもの昼食時の光景を思い出した。

「はい祐ちゃん、今日のお弁当! たくさん食べてね!」

世話焼きのあいつが作ってくれた昼食は、どんな食べ物よりも美味かった。
周囲の連中のからかうような視線の中、二人で向かい合って弁当を食べてたっけ。
ああ、腹が減った。なのに俺は、何も口にする気になれない。

気がつくと、いつの間にか俺の隣に一人の男子生徒が立っていた。

「祐介……」

優しそうで理知的な眼差しがこちらを見つめている。
俺の親友、水野啓一がパンの入ったビニール袋を片手に、そこに静かにたたずんでいた。

「昼抜きなんてどうしたんだ? ほら、買ってきてやったから食えよ」
「いや、いい」

差し出された袋を俺は突き返した。胃は相変わらず旺盛な食欲でもって食物を要求していたが、
俺の不安定な理性はそれを許さなかった。
啓一はもう一度袋を俺の前に持ってくる。その瞳にあるのは同情と……哀れみ。

「食べないと、昼からしんどくなるぞ」
「だからいいって」
「どうしたんだよ、今日のお前? ぼーっとしててさ。まるで抜け殻みたいじゃないか」
「んなことねえよ。ほっといてくれ」
「やっぱり、その……森田さんがいないから、か……?」
「…………」

俺は沈黙して、虚ろな視線を啓一に向けた。
こいつは頭が良くて優しくて、本当にいいやつだと思う。
だからその優しさが、今の俺には辛かった。

「ほら、食えって」
「いらねえ」
「いいから食ってくれ。無駄になる」

何度も繰り返された問答の末に、俺はとうとうパンを受け取ってしまった。
まるで味はしなかったが、それでも自分の消化器を満足させることはできた。
こんなときでも食い物を求める自分の胃が憎かったが、今はその憎しみすら憎かった。

何のために生きてるのだろう。
誰のために生きているのだろう。

亡霊となってふらふらと通学路をさまよいながら、俺はひとり家路についていた。
俺の家は学校からちょっと離れたところにあるから、この辺は帰宅する生徒の姿もまばらだ。
知り合いに今の自分の姿を見られずに済むというのは、幸いなことかもしれなかったが、
その俺にとっては至極どうでもいい話だった。

誰もいない通りを、俺はたった一人で歩いている。
いつもなら俺の隣にあいつが、瑞希がいるのに。
それでこちらを向いて、俺に笑いかけてくれるのに。
いっそ俺もあいつの後を追った方がいいんじゃないかとさえ、俺は思い始めていた。
こんなにあいつに執着するなんて。あいつが俺にとってこんなに大切な存在だったなんて。
今さらの発見に感心しつつも、俺はまだ死ぬことはできなかった。

瑞希を殺したあの少年。あいつだけは生かしておくわけにはいかない。
絶対に捜し出して、俺がこの手で殺してやる。何度でも何度でも、ぶち殺してやる。
暗い殺意に満ちた俺がふと前を見つめると――。

そこに、あいつが、いた。

「――――っ !!」
まさに獣のような雄叫びをあげ、俺はそいつに飛びかかっていた。
完全に理性を失くして拳を固め、渾身の力を込めてその頬を狙う。
そいつは俺を見ながら微笑んで、迫りくる俺を面白そうに眺めていた。
その優美な唇が開かれ、惚れ惚れする美声をつむぐ。

「それは無理だ。僕は殺せない」

その言葉にまたも俺の動きが止まり、突き出した拳はそいつの眼前で止まっていた。
止める気は全くなかった。俺の沸騰した頭はこいつをぶちのめすことで一杯で、
寸止めなどという発想がそもそも存在できるはずがないのだ。
それなのに、俺の腕はまるで空間に縫いとめられたかのようにぴくりとも動かず、
忌々しいにやにや笑いからほんの数十センチのところで、無様に停止してしまっている。
まただ。またしても、俺はこいつに触れられない。

「なん、でだ……!」

腕どころか足も腰も、体全体が自分のものでなくなったように動かなかった。
歯軋りして悔しさをにじませる俺の目から一筋の涙がこぼれたが、
こいつはその俺を実に楽しそうに眺め、冷たくあざ笑っていた。

「僕は魔法使いだからね。誰にも僕は殺せない。逆らう者は許さない」

秋の往来に場違いなほどの美貌と、聞く者を魅了する透き通った声音。
人間ではありえない完璧な存在を前に、俺はまたしても何もできなかった。

「いやあ、この間は君の彼女にいいものを見せてもらったよ、ありがとう。
 何ていうかあれだね、吹き飛び方がオモチャみたいで、実に面白かった。
 テレビで流せば、いい視聴率が取れるかもね」
「ふざ、けん、な……!」

こいつは悪魔だ。人間なんかじゃない、悪魔だ。
その悪魔が楽しそうに笑っている。一匹の悪魔が、哀れな少女の死を嘲笑している。

背筋がゾクゾクするほどの恐怖と畏怖に、俺はただこいつを見つめることしかできなかった。
殺したい相手が目の前にいるというのに、縮み上がって震えるだけ。
それでも動かない体の力を一点に集中させ、必死で声を絞り出す。

「この、人殺しが……! 俺も殺しに来たのか!」
「いや生憎と、その逆だね。僕は君を救いに来たんだ。
 この間のお話――僕の実験台になってくれないか、って提案だよ。
 どうだい? 僕を手伝ってくれないかな?」
「馬鹿を……言うな……っ! 誰が協力なんてするか……人殺しめっ !!」

意味のわからないことを言い出した悪魔をにらみ、精一杯の声をぶつけてやる。
だがこいつは俺の反応など意にも介さず、へらへら笑って話を続けた。

「もちろん、それなりの対価も用意するよ。
 というか僕に協力すること自体が、君にとっても相応のメリットになる。
 決して悪い話じゃない。むしろ破格の報酬と言っていいだろう。
 君が失った物どころか、それ以上の見返りが得られるんだからね」

失った物。俺が失った「モノ」どころか、それ以上の見返り――こいつはそう言った。
俺の目の前で死んでいった瑞希のことを、モノ呼ばわりしやがった。
あまりの怒りに、脳の血管が数本ぶち切れたかもしれない。
それでもちゃんと罵声をあげられたことは、はっきり言って奇跡だった。

「殺してやる……お前を、絶対、殺してやる……!」
「だからそれはできないんだってば、しつこいねえ。
 まあいいや。僕の説明を聞けば、君の気持ちも変わるかもしれない」

少年は忌まわしい笑顔でもって俺に微笑み、信じられない言葉を吐いた。

「君の彼女――森田瑞希さんが生き返るって言ったら、君は信じるかな?」
「何だと…… !?」

その突拍子もない発言に、俺は呆気に取られてしまった。
死者を蘇らせる。
古代から人が願い続けて、ついに果たせなかった空想だ。
こいつはそんな妄想を、芝居がかった調子で口にしているのだ。

「もちろん、いくら僕でも、死んだ人間を蘇らせることはできない。あくまで擬似的なものさ。
 でも君が望めば――そして君の頑張り次第で、君の望む瑞希さんが君のもとに帰ってくるよ」
「黙れ! そんなたわごと、誰が信じるかっ !! 殺してやる!」

狂っている。こいつの言葉が、こいつの声が、こいつの顔が、こいつの全てが、常軌を逸している。
だがこいつは俺の返答も予想通りなのか、嬉しそうに笑ってみせた。

「まあ待ちなよ。僕を殺しても、瑞希さんが帰ってくるわけじゃない。それに僕は誰にも殺せない。
 だったら僕に協力してくれた方が、まだ君にも希望が持てると思うんだけどね」
「誰が――くそっ、殺して……やる!」
「あっはっは、だから無理だってば。指一本動かせない君が、僕に何をどうするのさ。
 殺したいほど憎い相手が目の前にいるのに、殴るどころか触れることさえできないんだよ?
 それでどうやって、あの子の仇を討つの?」
「くそ……くそっ……」

たびたび見せられた、こいつの不思議な力。
やはりこいつは人間ではないのだろうか。本物の魔法使いなんだろうか。それとも超能力者か。
もしそうだとしたら――こいつの言うことは正しいのかもしれない。
無力な俺はこいつに逆らえない。どうすることもできない。それは間違いない。
このまま抗っても無駄なだけだ。瑞希の仇なんてとれやしない。

だがこいつに従えば、万に一つだが、瑞希を返してくれるかもしれない。
やっぱり騙されて、俺も瑞希と同じように殺されてしまうのかもしれないが、
ひょっとしたら、万が一もしかしたらという思いが、俺の中に湧き上がっていた。
瑞希が帰ってくる。それは今の俺にとっては、麻薬のように甘美な響きだった。

「愚か者は、それを失うまで自分が大事なものを持っていたことに気がつかない。
 今の君ならわかるでしょ? 瑞希さんが君にとって、どんなに大切な存在だったか。
 それを取り戻すためなら、仇の僕に頭を下げるくらい、何ともないんじゃないの?」
「うるさい……誰が……」
「君が僕に協力してくれたら、君だけの瑞希さんを手に入れる方法、
 瑞希さんを取り戻す方法を教えてあげよう。
 まあ信じるも信じないも君次第だけど、今の君には他に選択肢はないと思うよ?
 僕の力を借りて瑞希さんを取り戻すか、それとも全てを諦めるか、二つに一つさ」
「…………」

黒髪のツインテールと小柄な体格、そして愛らしい童顔。
そばにいるときは当たり前すぎて意識さえしなかった慕情が、俺の心を緩慢に締めつけていた。
こいつが俺を弄んでいるということも、充分過ぎるほどわかっている。
俺に何をさせたいのか知らないが、それが終わったら
俺も用済みとばかりに殺されてしまう可能性も、充分にあった。
だが、逆に言えば俺が殺されない可能性だって、ごくわずかだがあるんだ。
本当にこいつの言うとおり、瑞希が戻ってくる可能性もある。
希望。この悪魔が俺にもたらした、かすかな望み。
それは地獄から別の地獄へと通じる、細すぎるほど細い蜘蛛の糸に過ぎなかったが、
今の俺にすがるものは他になかった。

「さあ、どうする? 嫌なら僕は君の前から消え失せるよ。もう二度と会うことはないだろうね」
「…………」
「どうする?」
「……俺は、何をすればいい」
今までの人生で一番暗い声を、俺はそいつに返していた。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 

夕方。硬い表情を顔に貼りつけたまま、俺は帰宅した。両親はまだ帰っていない。
カバンを置いて制服から私服に着替え、落ち着くために水道水を一杯飲む。
緊張のため口の中がカラカラになっていたので、その潤いがとても心地よかった。
震える足をゆっくり進ませ、静かに目的の部屋へと向かう。

コンコン、コンコン。

そっとドアを叩くと、部屋の中から少女の声が返ってきた。
「……誰?」
「俺だ、今帰ってきた」

ドアにぶつけた声は、聞こえるか聞こえないかのギリギリのラインだったが、
中にいた少女は明るい口調で、俺に部屋に入るよう言ってくれた。
「ただいま……」
「おかえり、お兄ちゃん」

狭い部屋の奥に置かれたベッドに、パジャマを着た黒髪の少女が座っていた。
小柄な体と線の細そうな顔立ち、細くサラサラのストレートの長髪。
中川双葉、三つ下の中学二年生。俺のたった一人の妹だった。

「調子はどうだ?」
「うん、今日はちょっといいかも」

そう言って、少しだけ赤い顔ではにかむ。

俺の妹は生まれつき体が弱く、中学生になった今でも休みがちの生活を続けている。
入院の経験も多い。しかし気性は優しくて俺によく懐いてくれる、可愛い可愛い妹だった。

瑞希を失った今の俺にとって、双葉は唯一の心の拠り所とも言えるが、
それにも関わらず、今俺は、この妹を瑞希のために犠牲にしようなどと考えていた。
もし俺が正気だったら、きっと罪の意識に耐え切れず、首をくくっていることだろう。
だが、狂気に取り憑かれた今の俺は、大事な妹を生贄にすることすら厭わない。

俺はベッドに腰を下ろし、できるだけ平静を装って妹に話しかけた。
「双葉、ちょっと話があるんだ。聞いてくれるか」
「うん、何? お兄ちゃん」

全く俺を疑っていない顔で、双葉が聞き返してくる。
兄のひいき目を差し引いても、双葉はとても可愛らしい女の子だった。
こちらを見やる無邪気な顔は、俺の良心を無言で痛めつけてくるが、
脳裏に浮かぶ亡き幼馴染の姿を思えば、俺は鬼にでも悪魔にでもなってやる気でいた。

俺は双葉の肩に両手を置き、じっと妹と見つめ合った。
黒くくりくりした瞳が、真っ直ぐ俺を向いている。

「双葉……俺の目を、よく見てくれ」
「何なの、お兄ちゃん? どうしたの」

間近で俺の視線に射抜かれ、双葉は恥ずかしそうに目を逸らした。
そんな妹を半ば無理やりに押さえつけ、俺ははやる心で言葉を続けた。

「ちょっとの間、じっとしててくれ。ちょっとでいいから」
「う、うん……わかった。我慢する」
「そう、目を閉じずに、よく見るんだ。じっと俺の目を見て……」
「うん……」
「何が見える? 俺の目が、俺の黒い瞳がよく見えるだろ?」
「うん……何だか、吸い込まれそう……」
「それでいいんだ。もっとよく見てくれ。そうだ、じっと見て……」

双葉の肩を押さえながら、ひたすらに黒い視線を浴びせ続ける。
はた目にはにらめっこか愛の告白にしか見えないだろうが、俺は真剣にこの行為を繰り返した。
俺が力を込めるたび、双葉の目から心が失われていき、だんだんと意思がなくなっていく。
あいつの言った通り、俺の妹は術にかかりやすい体質だった。実に好都合なことに。

あいつ、あの美貌の少年の言葉が俺の脳裏に蘇る。
「君もお察しの通り、僕は人間じゃない。特別な力を持つものだ。
 君たち人間の心と身体を支配し、操作する能力を持った存在だ。
 今まで君たち人間を使って、色々と遊ばせてもらってたんだけどね。
 でも、自分だけで遊ぶのもワンパターンで、いい加減飽きちゃってさ。そこで思いついたんだ。
 もしこの力――他人を操る力をただの人間に分け与えたら、いったいこの力を
 どんな風に使ってくれるんだろうか。そう思って、君に協力をお願いしたってわけさ」
「他人を操る力……だって?」

この恐ろしい少年の力を、自分が使えるようになる。俺がこいつの同類になる。
ある意味では歓迎すべき事態なのかもしれないが、今の俺は恐怖しか感じなかった。
「ああ、君はこう思っているね。そんな力があるなら、わざわざお願いなんかせず、
 最初から自分を操って無理やり言うことを聞かせればよかったじゃないか。
 そう思っているだろう? そうすれば、あの子は死なずに済んだのに、ってね」
「…………」
「でも駄目なんだよ。君に与えるのは僕の力のほんの一部と、その使い方だけ。
 むやみに君をいじくって、心をがんじがらめに縛っちゃったら、面白くなくなっちゃうでしょ?
 だから君には自分の意思で、力を使いこなせるようになってほしいんだ。
 そのために、わざわざ君の彼女を消して、目的意識を持たせてあげたんだから」

俺の心が震えている。怒りと恐怖の間で板挟みになって、悲鳴をあげている。
こいつはそんな俺の様子が面白くてたまらないのか、笑顔を決して絶やさない。

「だから、宿題だ。君には他人の心と記憶を操る力をあげよう。
 君はそれを使って、君の理想の瑞希さんを作り直すんだ。それが君の、当面の課題さ。
 素材は――そうだね。君の妹さんなんて、どうだい?」
「妹……双葉のことか……?」
「僕の見たところ、君の妹さんは心身共に脆く弱い。そして君を全面的に信頼している。
 なかなかいい素材だと僕は思うよ。心を思い通りに塗り替えるのに、ぴったりの」

そうして俺は、あの少年から力を分けてもらった。
人の心を自在に操る、強力無比の力を。

小さい頃から病弱で、俺を慕っていた妹の双葉。
その双葉の記憶と人格を否定し、俺の思うように塗り替える。
神をも恐れぬ所業、とはまさにこういうことを言うんだろう。
だが、あいつを――瑞希を失った今の俺にとっては、この力がどうしても必要なんだ。
すまん、双葉。俺はお前を……。


そんなことを考えている間に、双葉の施術は終わったようだった。
確認のために妹の名を数回呼び、静かに語りかける。

「双葉、双葉……聞いてるか? 聞こえてるか、俺の声が?」
「……ん、誰……お兄ちゃん……?」

焦点の合わない瞳が、何もない前方をじっと見つめている。
どうやら成功したようだが油断はできない。俺は用心深く言葉を選び、妹の耳元で囁き続けた。

「お前は疲れて眠ってしまったんだ。だから今、お前は夢を見ている。これは夢だ」
「これは……夢……?」
「そう、お前は夢の中にいる。夢の中だから、お前以外は誰もいない。
 今、聞こえているのは自分の声だ。自分の心の声だ」
「心の、声……」

ぼんやりと目を開けたまま、意識を失くしたかのように俺の台詞を繰り返す。
俺は内心の興奮を抑え、双葉の心を自分が望む方向に誘導していった。

「自分の心に嘘はつけない。お前は真実だけを言い、真実だけを聞く。
 これから聞こえる言葉もお前にとっては全て真実であり、絶対に正しい」
「真実……正しい……」

納得したようにカクンを縦に首を振る双葉。かかりは上々だ。
俺は双葉の肩から手をどけて身を引き、そっと問いかけた。

「お前は誰だ?」
「私? 私は中川双葉、十四歳……パパとママとお兄ちゃんの四人家族……。
 体が弱くて学校を休んでばっかりで、とっても困ってる……」
「違う」
「違う?」

俺は双葉の言葉を否定し、代わりの情報を植えつけた。

「お前は中川双葉じゃない。それはお前に植えつけられた偽物の記憶だ。
 本当のお前は、違う名前の人間だ」
「偽物……本当は、違う……」
「お前は、双葉じゃ、ない」
「私は、双葉じゃ、ない」

律儀に俺の言葉を復唱する妹が、どんどん愛しくなってくる。
だが焦ってはいけない。俺は我慢に我慢を重ね、じっくり双葉に教え込んだ。

「お前は双葉じゃない。それは本当のお前じゃない」
「それなら、私は誰? 私は誰なの?」
「お前の本当の名は、森田瑞希。中川祐介と小さい頃からずっと一緒だった、幼馴染だ。
 そして今は祐介の恋人。いつも祐介のそばにいないと気が済まない、恋に焦れた一人の女だ」
「森田、瑞希――祐介の恋人……」

意識のない双葉に、大事なキーワードを埋め込んでおく。
自分は瑞希であること。そして祐介の恋人であること。その二つは絶対に欠かせない。

「お前は瑞希、森田瑞希だ。だが今は、とある事情で祐介の妹、中川双葉を演じている。
 お前は本当は瑞希だが、人前では双葉を演じないといけない」
「私は瑞希……人前では双葉を演じる……」
「お前の好きな祐介と二人きりのときだけ、お前は本来の存在である瑞希に戻れる。
 二人だけのときは双葉をやめて瑞希に戻り、祐介の恋人でいられる」
「祐、介……二人きり……恋人……」
「自分と祐介以外の誰か、第三者がそばにいるときは瑞希に戻ってはならない。
 それがたとえ自分の両親であっても、自分と祐介以外の人間の前では、
 祐介の妹、双葉を演じなければならない」
「第三者がいるとき……妹を演じる……」

最初はこんなところだろうか。俺はそろそろ暗示をかけるのをやめ、双葉を戻すことにした。
耳たぶに軽く口づけて、ちょうど恋人がするように囁いてやる。

「今から三つ数えるとお前は目覚める。だが目覚めても今の内容は覚えている。
 普段は双葉を演じ、祐介と二人きりのときに限って、本来の姿である瑞希に戻る」
「…………」

うなずく双葉に、俺は大きな声で数を数えてやった。

「一、二……三!」

それと共に双葉の瞳には光が戻り、理性が帰ってきた。
「…………」
しかしまだ記憶が混乱しているのか、ぼんやりと前を見つめたままだ。
ひょっとして失敗したのかと危惧する俺に、双葉は虚ろな視線を向けた。

「あっ……!」

何かを思い出したかのような、はっきりした声。
次の瞬間、双葉は満面の笑みを浮かべて俺に抱きついた。

「祐、介……? 私、瑞希……!」
俺はにじみ出る歓喜に己を見失い、思い切り妹と抱き合った。

後編


それから毎日、俺は妹の心を瑞希のものに塗りかえていった。
「俺を呼ぶときは嬉しそうな声で『祐ちゃん』だ。わかったな?」
「瑞希はプリンが好きだろ? 違う、スプーンの持ち方はこうだ」
「覚えてるか? この傷、小三のとき二人で行った、サイクリングのときについたんだぞ」

思いつく限りの瑞希の記憶を、双葉の耳に注ぎ込む。

そうしているうちに、初めは明らかに違う人間だった瑞希と双葉が、
だんだんと近づいていくように俺には感じられた。
それに合わせて双葉の体調の方も良くなっていき、別の意味で周囲を喜ばせた。
相変わらず両親の前では兄と仲のいい妹であり続けたけれど、
その関係も少しずつ親密なものになっていった。

もちろん、自分のやっていることが外道の所業だということも、俺はよくわかっていた。
大事な妹の人格を、妹の存在を否定し、俺の望むモノに塗り変えようというのだから。
おそらく、俺は地獄に落とされるだろう。
しかしそれでも、それでも俺は、瑞希を取り戻したかった。
たとえそれが偽者であっても、自分で作った都合のいいマネキン人形であっても、
それでも俺は、俺の瑞希を取り戻したかったんだ。


夕食の席で、箸を握った双葉が俺に言う。
「お兄ちゃん、おショーユ取って」
「ああ、ほれ」
「ありがと、お兄ちゃん」

その晴れ晴れするような笑顔に思わずドキリとして、俺は妹から顔をそらした。
それを眺めていた親父が横からちょっかいをかける。

「双葉、妙にご機嫌だな。何かいいことでもあったのか?」
「ふふ~ん、パパには秘密だもんっ!」
「あらあら、この子ったら……」

一家四人で囲む幸せな食卓。
だが俺は自らこの幸福をぶち壊し、自分の汚らわしい欲望を充実させようとしていた。
罪悪感がないと言えば嘘になる。しかしもうどうしようもない。
日に日に瑞希に近づいていく双葉を手放すことは、今の俺にはとてもできそうにないのだ。

「ごちそうさま!」

手を合わせてそう言い、席を立つ黒髪の少女。
不意にその妹の顔に、死んだ恋人の姿をダブらせ、俺は息をひきつらせた。

「ぐ――げほっ! ごほん!」
「どうしたの祐介。喉に詰まった?」
「い、いや大丈夫。ごちそうさん」

慌てて母親にそう答え、俺もその場を離れた。

妹の部屋に行くと、双葉が笑顔で声をかけてきた。
「あ、祐ちゃん。どうしたの?」
普段、俺を「お兄ちゃん」と呼ぶはずの妹は、今はあいつと同じく愛称で呼ぶ。
すり込んだ記憶が保たれていることに安心し、双葉の髪を撫で上げた。

「ん……何でもない。大好きな瑞希の顔が見たくなっただけさ」
「もう。そんな恥ずかしいこと、真顔で言わないでよ」

少し赤くなって口を尖らせる双葉。俺の前でだけ、こいつは俺の女、「瑞希」に変わる。
仕込みを始めて既に三日。順調にその効果は表れていた。

俺は妹の隣にあった、座布団の上に腰を下ろした。
横目で双葉を見やると、こいつもこちらを見返して微笑んできた。
妹が兄を見る目ではない。女が男を――それも、愛する男を見る目だった。
目を合わせたまま双葉を抱き寄せ、パジャマに包まれた華奢な体と抱擁を交わす。

俺に抱きしめられたことに喜んでいるのか戸惑っているのか、双葉の声は上ずっていた。
「ゆ、祐ちゃん……?」
「瑞希、瑞希、瑞希……」
何度も何度もその名を呼ぶ。妹の耳にこすりつけるように。

そこで双葉の体を離し、仕込みを続けることにする。
俺の彼女である「瑞希」は、当然、俺と肉体関係にあるわけだから、
そっちのテクニックもきちんと覚えさせないといけないのだ。
俺は座布団の上であぐらをかいたまま、双葉に向かってこう言った。

「瑞希、悪いんだけど、ちょっとフェラしてくれないか」
「ふぇら?」
「そ、口でするやつ。こないだもやってくれたろ? あれ頼む」
「うん、フェラだね……わかった」

病弱のため、今まで性に関する知識が皆無だった双葉だが、この三日間、随分と頑張ってくれていた。
まだ本番には至っていないが、俺を気持ち良くさせる行為は真っ先に教え込んである。

「じゃあ祐ちゃん、やってあげるね」
双葉は俺の下半身に覆いかぶさり、ベルトとズボンのチャックを外した。
そしてトランクスの中から、だらりと萎えた肉棒を取り出してみせた。
不慣れなはずなのに白い指でためらいもなく陰茎を挟み、上を向かせた亀頭を口に含む。
パクッ――魚が餌に食いついたような音が、俺の脳内に鳴り響いた。

「んっ、ちゅるっ、んんっ、ん……」
双葉の小さな口が俺のモノをくわえ、口内で粘膜を絡めてくる。
妹の体温と唾と、たどたどしくも献身的な舌の動きが俺の性器をしごき上げる。
なかなかに気持ちがいい。たちまち俺は勃起してしまった。

「ん、んんっ、んぶぅっ」
双葉の声がやや苦しげな響きを帯びる。
くわえ込んだ肉棒は硬く張りつめ、双葉の頬を内側から膨らませた。

俺のは特に巨根ではなく、年頃の男としてはごくごく平均的なサイズのはずだが、
それでも妹の狭い口腔を満たすくらいの大きさにはなる。
舐めづらいだろうに、それでも口の中で必死に舌をすりつけてくる双葉の姿に
兄として、男として感動しないわけがない。
俺は妹の頭を優しく撫でながら、その口淫を存分に堪能した。

「んっ、ずうっ、んん、んんっ」
「気持ちいいよ……瑞希」
「ん、んんっ?」
俺の言葉に双葉は顔を上げ、上目遣いにこちらを見やった。
薄桃色の唇を目一杯に開き、いきり立った兄の性器を熱心にしゃぶる俺の妹。
罪の意識は確かにあるが、それ以上に心地よさと興奮が強かった。

「じゅるっ、ずず、ずずずぅっ!」
「うっ、ううっ!」
今度は亀頭を重点的に攻め、袋を揉みながら激しく尿道を吸い上げてくる。
突然のことに俺は情けない声を上げ、陰茎をブルブルと震わせた。
双葉のやつ、こんなテクニックをどこで――って、俺が教えたんだったか。
さすがの俺も余裕を失い、射精が間近に迫っていることを自覚させられた。

妹の髪を指で軽くとかしつつ、俺は震える声で告げる。
「瑞希……俺、そろそろ出そうだ。飲んでくれるか……?」
「ずっ、じゅるっ、ん、んんっ!」
双葉はコクコクとうなずいて、ますます俺を責めたてる。
早く出せ。妹の口に射精しろ。手と舌でそう言っている。何を遠慮することもない。

俺の両手が双葉の頭をがっちり押さえ、ガクガク前後させて脳みそをシェイクした。
「うっ、瑞希、出すぞっ……!」
喉の奥まで思い切り肉棒を突っ込み、欲望の塊を噴射する。
尿道から新鮮な子種が噴き出し、双葉の食道から胃に流れ込んでいった。

「んんっ、んぐっ! げほっ、ごほっ!」
双葉が俺から身を離し、激しく咳き込む。

いかんいかん、ちょっとやり過ぎたかもしれない。
俺はうつ伏せで悶える双葉の背をさすり、謝罪の言葉を述べた。
「すまん瑞希……。大丈夫か?」
「げほっ! かはっ、ごほん! うう……最後の、苦しかったよう。祐ちゃん」
恨めしげにこちらを見つめてくる妹の頭をナデナデしてやり、ご機嫌取りに励む。
涙目の双葉はとても可愛かったが、かなり機嫌を損ねてしまったようだ。
こうなるとなかなか笑顔になってくれない。まったく困ったものである。

仕方ない。今回はここまでにしておこう。
名残惜しくはあったものの、俺はもう一度双葉の頭を撫でてやってから、自室に戻った。
風呂の間も寝床に入ってからも、思考の大半を占めるのはこれからのことだった。
すなわち、どのように妹を仕込んでいくか。そのことで俺の頭は一杯になっていた。

妹の双葉に術をかけ始めて今日で七日目。もうそろそろ、充分な効果が出ているはずだった。
もちろん俺は、今日も妹に術をかけ続ける。大事な「瑞希」を手放さないために。

夜、妹の部屋に入れてもらい、俺は背後のドアを閉めた。
双葉は薄い色の寝巻き姿で、愛情のこもった視線を俺に浴びせかけてくる。
「祐ちゃん……」
「瑞希……」

俺と二人きりのときだけ、こいつは俺の女、瑞希でいられる。
何を遠慮することもなく、俺はベッドに双葉を押し倒し、乱暴に唇を重ねた。
「んっ、んんっ……!」

嫌がりもせず、俺を嬉しそうに受け入れる妹。
口内に侵入してくる舌を自分のと絡め、いやらしい音をたてて舐めまくる。
「んふっ、んちゅっ、じゅっ……!」

一途に俺を求めてくる舌の動きも、俺の体に回される腕の感触も、記憶の中の瑞希そのものだった。
混じり合った二人の唾液を双葉の口に注いでやると、彼女は美味そうにそれを飲み干し、
間近で見つめる俺に甘い息を吐きかけてきた。

「祐ちゃん……好き、好きだよ……」
瑞希の口調でそう言って、俺の体を愛しげに撫で回してくる双葉。
俺の方もそれに答えるように布越しに妹の乳房を揉み、首筋や脇腹に指を這わせた。

「ん、祐ちゃ――それ、いい……!」

幾度となく繰り返された愛撫によって、双葉の無垢の体はちゃんと感じるようになっている。
俺は妹の寝巻きをゆっくりと脱がせ、まだ未熟な裸体を電灯の下にさらけ出した。
ブラジャーもさして必要ないほどのささやかな胸に顔を寄せ、小さなつぼみに口づける。
白い肌に俺の唾を塗りたくってやると、快感からか、双葉は甘い声で鳴いてみせた。

「あっ、んはあ……」
これでいい。まさしく俺が求める瑞希の反応だ。

俺は興奮を抑えきれず、妹の下半身を覆っていた布地を、力任せに引きずりおろした。
そこに見えるのは、未だ男を受け入れたことがない、清純な女の秘所。
妹は瑞希と同じく毛が薄くて、割れ目の辺りも、今は亡き俺の恋人と実によく似ていた。
あいつもかなりの幼児体型だったし、違いと言えば、俺を受け入れたことがあるかないかだけ。
俺が性器に指を這わせると、双葉は軽く声をあげて体を浮かせた。

「はうぅ……祐、ちゃん……」
「今日は最後までしてやるからな、瑞希」
「うん……嬉しい」

うるんだ瞳で俺を見上げ、妹が笑顔でうなずいた。

最後に瑞希としたのはいつだったか。俺はそんなことさえ思い出すことができずにいた。
だが、それも今日で終わりだ。俺の望む瑞希が、今ここにいるのだから。

既に双葉の割れ目は汁を漏らし始め、俺の愛撫を今か今かと待ちわびている。
肉をかきわけ、そっと右手の人差し指を入れてみた。
「ふああっ……!」

双葉の膣はきつく兄の指を締め上げ、分泌する液体の量を増やしていく。
敏感な肉壷に突き込んだ指を動かすたび、妹はビクビク震え、俺の名を呼んで跳ね回った。
今度は中指も加え、二本の指で双葉の性器を犯す。
処女に二本も入るものだろうかと少々心配になったが、
意外にも妹の膣は喜んで侵入者を歓迎し、熱い汁ときつい締めつけで迎え入れてくれた。

「ふあ、ふああっ、はっ、はあっ……!」
雌の本能に染まった少女が喘ぎ、ベッドの上で心地よい悲鳴をあげる。

その間にも俺の左手は双葉のペチャパイを刺激し、
少しでもこれを育ててやろうと躍起になって揉み続けていた。
瑞希も貧乳だったが、胸のなさなら双葉も全く負けてはいない。
俺は苦笑しつつも、妹の上と下とを同時に責めたて、存分に鳴かせてやった。
当然のように俺の股間では、はちきれんばかりの肉棒が硬くそそり立っている。

もうすぐだ。もうすぐ瑞希が、俺のところに帰ってくる。
目前に迫った恋人の帰還に俺は高揚し、求めるままに双葉の愛撫を続けた。

「……ふああっ !! はあ、ひうぅっ !!」
ガクガクと震え、気を失いそうになって体を硬直させる妹。どうやらイったようだ。
貧しい乳房からは二つの突起が懸命に立ち上がり、女陰からはだらしないよだれを垂らしていた。
その乱れに乱れた双葉の姿がとても愛しくなって、俺は妹をぎゅっと抱きしめた。

「瑞希、好きだ。大好きだ……」
「祐ちゃん……嬉しい、私も……」
「瑞希、ゴメンな。あのとき守ってやれなくて……」

気がつけば俺は妹を抱いたまま、両の目から思い切り涙を流していた。
無力な俺の目の前で死んでいった瑞希。俺に助けを求めて視線を伸ばし、
口を開いて声にならない声をあげていた瑞希。

『祐ちゃん……』

瑞希の声と妹の声が重なった気がして、俺はハッと顔をあげた。
もちろん幻聴だ。そうに決まっている。死人は声を出さないし、語りかけもしない。
だが俺はその声を錯覚だと言い切れず、汚れた顔で瑞希に返事をした。

「瑞希……みずきっ……!」

俺の腕の中にいるのは実の妹。だが俺にとっては大切な女、瑞希だった。
たとえ偽者であっても人形であろうとも、俺にとってこいつは瑞希なんだ。
だから俺はこいつに謝って、今まで足りなかった分も愛して、大切にしてやらないといけない。

愛して――そうだ。俺と瑞希は、これから一つになるんだ。

俺はズボンの中からギンギンに勃起した陰茎を取り出し、双葉の股間に照準を合わせた。
ベッドの上で俺にのしかかられ、双葉が熱のこもった声で言う。
「祐ちゃん、もういいよ。お願い、きて……」
「ああ、わかった……」

そこはもう洪水のようなありさまだったが、何しろ初めてだから気をつけないといけない。
瑞希の処女を奪った俺が、もう一度こいつの初めての相手になるなんて。
俺は心の中で小さく苦笑し、大事な妹の中に自分自身を突き込んで――。

そして、俺たちは全てを思い出した。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 

「う、くうっ……!」
俺が肉棒を突っ込んだ先は、処女の性器などではなかった。
何度も何度も俺と交わった懐かしい膣の感触が、快感となって俺の脳を冒す。
気持ちいいのは双葉――いや、瑞希も同じようで、俺の下で口を開けてよがっていた。

「ふあぁ――祐ちゃんの、入ってくるぅ……!」
「う……中、きつっ……!」

瑞希の中から灼熱の肉汁が溢れ、とろける襞が俺のモノに絡んでしごき上げてきた。
腰を動かすたびに結合部と二人の口からは嫌らしい音波が流れ、互いの聴覚を刺激した。
本人がいつもコンプレックスを感じている幼児体型だが、
狭く締めつけがきつすぎる辺りが、俺は密かに気に入っていた。
平凡な大きさの俺の性器でも容易に最深部に届き、楽に子宮口をノックできる。
亀頭で膣壁の奥の奥、瑞希の一番深いところをえぐり込んでやるのが好きだった。

久々のセックス。この一週間、望んでやまなかった交わりに、俺は自分を抑えきれず、
大胆かつ乱暴に、この小柄な幼馴染の少女を寝床に組み敷いて犯し続けた。
瑞希の方もそんな俺を受け入れ、発情した顔で嬉しそうに腰を振りまくる。

「んんっ……! 祐ちゃ、祐ちゃ――いいよぅっ !! もっと、もっと動いてえっ !!」
「瑞希――好きだっ、瑞希っ……!」
「はあっ、私もぉっ !! ゆうちゃんだいしゅきぃっ♪」

開いたままの瑞希の口にむしゃぶりつき、はみ出していた舌をがむしゃらに味わう。
繋がる前とは比べ物にならないほどの興奮で、俺たちは互いの口内を舐めあった。

「んふぅ――ゆうちゃんっ……」

仰向けになった瑞希の口の端から、一筋の雫が垂れていく。
思わずこちらが舌なめずりをしそうな扇情的な表情を、俺の恋人は存分に見せつけてきた。
それがまた愛しくて、少女の頭をかかえて抱擁と再びの口づけを交わす。
上だけでは満足できないのか、瑞希は細い脚を俺の体に絡めてきた。
腕も脚も口も性器も、自身の全てを使って俺と繋がろうとする愛しい少女。
俺も言葉と表情、行為の限りを尽くして、瑞希と愛を語り合った。

「はあ、はあぁっ、ふああぁんっ !!」
「ふうぅ――瑞希、みずきぃ……!」
「らめぇっ……わらし、いっひゃ…… !!」

再度少女の体が跳ね、全身を震わせたのち弛緩させる。
俺の方も張りつめた陰茎を爆発させ、瑞希の中に自身の欲望を吐き出した。

「瑞希――中、出るっ……!」
「あっ、あっ、ああっ、あひっ、あっ!」

久々の射精は、俺が思いつく言葉では言い表せないほど心地よかった。
瑞希の子宮が溢れてしまいそうなほどの子種が、男から女の中へとドクドクと注ぎ込まれていく。
小便じゃあるまいし、なんでこんなに出るのやら。
ぴったり少女に密着したまま、俺の精液は後から後から噴き出し続けた。
ゴムはつけていないし、安全日なのかどうかもわからない。妊娠させてしまうかもしれない。

だが構わない。瑞希を失う恐怖を知ってしまった今の俺は、
これからもこいつの傍にいられるのなら、たとえ孕ませて責任を負うことになっても、
別にどうということはないと思っていた。むしろそうなった方が望ましいくらいだ。
そんなわけで俺は、妊娠のリスクを一顧だにせず、瑞希の中にひたすら射精し続けたのだった。

「はあ、はあ、祐ちゃんの、まだ出てくるよぉ……」
「瑞希すごいよ。マジ気持ちいい……」

瑞希のか細い体を抱きしめてたっぷりと子種を植えつけた俺だったが、
興奮冷めやらぬ俺の肉棒は、依然として衰えることはなかった。
竿を硬く膨張させて、内側から瑞希を圧迫してやるのが実に気持ちいい。

「はっ、はあっ……ゆ、祐ちゃんの、おちんち、まだ、硬いぃ……」
「ごめんな瑞希。俺……」

俺は抱きしめた瑞希の耳元で、小さくつぶやいた。
今の今まで瑞希を、最愛の少女のことを忘れてしまっていた。
瑞希のことを妹だと思い込み、怪しい力を使って無理やり俺の虜にしようとした。
しかもその力でさえ、まったくの偽物。
誰でも思い通りに操ることができる万能の力だと、俺がそう思い込まされていただけだった。

いったい俺は、今まで何をしていたのだろうか。
我に返った今、俺は自分を殺してやりたいとさえ思っていた。
後悔と羞恥に心を締めつけられ、大事な恋人にただ謝るしかない。

しかし瑞希はそんな俺を咎めることなく、優しい声を返してきた。
「ううん、いいの。祐ちゃんは何も悪くないよ。私だって今までずっと、夢見てた。
 夢の中で祐ちゃんのこと、お兄ちゃんって思ってた……」
「瑞希……」
「えへへ、不思議だね。
 私と祐ちゃん、どっちも一人っ子なのに、いつの間にか兄妹になってたんだもん。
 でも、私はイヤじゃなかったよ? 祐ちゃんのこと、お兄ちゃんって呼ぶの」

操られていた間、俺は瑞希の兄として、瑞希は俺の妹として、偽りの日々を送った。
恋人を失った悲しみと、妹を自分の欲望の餌食にする罪悪感。
俺にとってこの一週間は地獄の亡者のようなどん底の生活だったが、
瑞希は俺のことを許してくれて、しかも楽しかったと言ってくれている。
心の底から救われたような気持ちになり、俺は再度、瑞希の体をきつく抱きしめた。

「瑞希……」
「祐ちゃん……」

苦しいだろうに、俺をぎゅっと抱き返してくれる瑞希。
そんないじらしいところもまた、俺は大好きだった。

「んっ……! 祐、ちゃ……!」
抱き合ったその拍子に、瑞希の中に埋め込まれた俺のモノがこすれ、
新たな快感となって二人の脳を冒した。
あれだけ射精したというのに、俺の肉棒はまだいっこうに衰えない。

俺は頬を赤くして、瑞希に向かって囁いた。
「なあ瑞希……こんなときに何だけど、俺……もっとしたいんだ。
 だから……続けていいか?」
「うん、いいよ……私も、もっと祐ちゃんと……」

期待と官能に染まった幼馴染の声。こちらを見上げる視線も情欲を含んでいた。
どうやら瑞希の方も、まだまだ足りないらしい。
体液で汚れたベッドの上で、俺は再び瑞希を犯し始めた。

「あ――ゆ、祐ちゃん……?」
仰向けになった瑞希の膝を曲げさせ、脚の間に体を入れる。
もちろん股間のものは、瑞希の中に深々と挿入されたままだ。一応これも、正常位に入るのだろうか。
恥ずかしそうな瑞希の顔を上から見下ろす征服感、体をすりつけて得られる密着感が実に心地よい。

先ほどイったばかりの瑞希のほっぺたは、まるでリンゴのように真っ赤だった。
興奮と絶頂の余韻と、屈辱的な姿勢がもたらす羞恥が、はっきり頬を火照らせている。
そんな瑞希にのしかかって挿入部をグイグイと圧迫する、この快感。
男女の合わさった部分から、俺と瑞希の混合液がトロトロと溢れてくるのも最高だ。

「あ、ああっ……! ゆ、祐ちゃ、そんな、やっ、激しっ……!」
「すまん、瑞希……腰、止まんねえ……」

グッチョグッチョと卑猥な音を立てながら、肉棒がまた膣内をかき回す。
上体を倒しながら、しかし体重をかけすぎないように注意して、俺は瑞希を押さえ込んだ。
両の手をシーツについて、百五十センチあるかも疑わしい小柄な少女を上から犯す今の俺の姿は、
知らない人が見たら犯罪行為と誤解してしまう、スレスレの領域だろう。
だが間違いなくこの女は、俺の妹の中学生などではなく、
小さい頃からずっと俺と一緒に過ごしてきた、幼馴染の同級生なのだった。

「ん、んんっ、あ、ああっ! やっ、やあ――!」

曲げた手足をバタつかせ、涙ながらによがり狂う黒髪の女。
ガキっぽい童顔で幼児体型のくせに、瑞希の喘ぎ声のエロさは一人前だ。
そして俺の陰茎をくわえ込んで離さないこの締めつけも、いつものこと。
汁を絡ませ肉を絞り、必死で俺を締めあげる。

しかし俺はさっき出したばかりで、多少の余裕があった。
瑞希の熱と汁とを堪能しつつ、喘ぎまわるその顔を眺めて悦に入る。
充分以上に可愛いこいつの顔立ちは、やはりどこか子供っぽいが、その微笑ましさと
唇から漏れるよだれ、あられもない嬌声とのギャップが、たまらなくヤバい。

「あっ、ああ――ゆっ、ゆう、ちゃ……んっ、んああっ !!」

俺の名を呼びつつ、腰を前後に揺すって体液を漏らし続ける瑞希。
その白い肌もシーツもベトベトで、まったくひどいありさまだった。
心の底でふわりと笑いながらも、俺は瑞希を責めたててやまない。
体を上下させ、挿入した部位を激しく往復する。こすれた肉がグジュグジュ唸る。
快感と満足感と、そして征服感が、俺の心をじわじわと侵食していった。

やがて瑞希が膣をギチギチ絞り、また俺の射精を求めてきた。
真上を向いて馬鹿みたいに口を開け、恥じらいのない絶叫が響く。
「やっ、あああっ、ひいぃ――い、イク、イっちゃうっ!」

それを確認した俺も、口元をほころばせてうなずいた。
「ああ、瑞希……俺も、もっかい……」
「あふ、ああっ! ふあっ、ゆっ、ゆうちゃっ、あああぁっ !!」

グッと上からのしかかり、一気に奥まで突き入れる。
陰嚢がブルブル震え、瑞希の一番深いところに突き刺さった先から、熱いものを撒き散らした。
俺の愛情と欲望がめいっぱい凝縮された、濃厚すぎる雄のスープ。
ビュルッ、ビュルビュルという卑しい音が実際に聞こえてきそうなほどの勢いで、
凝縮された俺の遺伝子が、瑞希を孕ませようと膣の奥深くに注ぎ込まれていく。
二度目の中出しだったが、やはり充分な量を射精した俺は、満ち足りた息を一つ吐いた。

瑞希はと言えば、俺の下になったまま、ぐったりしてヒューヒュー息を漏らしていた。
満足そうに顔を歪め、そして時おり身をピクピクさせて、雌の喜びを全身を使って表現している。
失神しているのかもしれないが、たまに吐息の中に意味不明の音声が混じるので、
一応、意識の欠片は残っているようだった。

半死半生の瑞希の虚ろな瞳と垂れたよだれ、口から漏れる息とうわ言が、この上なく艶かしい。
さすがに、俺はこんなマグロ状態のこいつを犯し続けるほど鬼畜ではなかった。
まだ少し張りの残る肉棒をズブリと引き抜き、てらてら光るそれを照明の下にさらけ出す。

「ふう……」
そこで俺はやっと瑞希を手放し、彼女に寄り添うように、汚れたベッドに横になった。
後に残ったのは適度に弛緩した男女の体と、恋人同士の荒く艶かしい呼吸だけ。
それ以上の言葉は発さず、そっと瑞希の手をとって、ぼんやり天井を見上げる。

全ての記憶を取り戻し、互いの存在をもう一度確かめ合った、俺と瑞希。
言い知れない幸福感に包まれ、俺が意識を失いそうになった頃、
その頭上から落ち着いた声がかけられた。

「お疲れ様。楽しませてもらったよ」

まるで美術館の絵画の世界から抜け出してきたかのような、不自然な美貌。
歳は俺と同じくらいだが、不思議と成熟した老人を思わせる風格をかもし出している。
そんな私服姿の少年がいつの間にかベッドの脇に立ち、静かに俺を見下ろしていた。

「ちっ、お前か……」

げんなりした口調で、それだけを言い返す。
全てを思い出した今、あの煮えたぎるような殺意も消え失せていたが、
それでもこいつを殴りたいとは思っていた。俺の気が済むまで、思い切りボコボコにしてやりたい。
だがそれは不可能だろう。
俺は心身ともに疲労しきっていたし、それに、やはりこいつは普通の人間じゃないようだった。
魔法使いか悪魔か、それとも超能力者か。
やろうと思えば、俺をこのまま消し去るくらい、簡単なことだろう。なら逆らっても無駄だ。
俺は達観と諦観の狭間で揺れ動きながら、大きな息をひとつ吐いた。
隣ではとうとう完全に意識を失った全裸の瑞希が、気持ちよさそうに寝転がっている。

「ったく、こういうことかよ。最後まで思い出せなかった……」
「彼女と最後までしちゃうのが、暗示を解く唯一の方法だったからね。仕方がないよ」
「結局、俺はお前にもてあばれて、哀れなピエロを演じてたってわけか……くそ」
そう吐き捨てる俺を見て、少年が嬉しそうに唇を弧状に曲げる。

簡単なことだ。瑞希が車にはねられて死んだというのがそもそも嘘、俺が見せられた幻だったんだ。
妹の双葉なんて子も、最初からいやしない。あれは俺の妹だと思い込まされていた瑞希だ。
俺も瑞希もこの少年に記憶と認識をいじくられて、
「恋人を殺された不幸な男」と「その病弱な妹」になりきっていただけ。
俺と瑞希と、あと俺の両親の四人。他にも何人か操ったかもしれない。
こいつはそうして俺と瑞希を偽りの兄妹に仕立て上げ、横からその茶番劇を眺めて笑っていたんだ。
瑞希がいなくなったのに学校の皆がいつも通りだったのも、ただの欠席だから当たり前のこと。
俺はこの一週間の間、本物の瑞希を実の妹だと思い込み、
さらにそれを瑞希本人に仕立て上げようとする、愚かな道化になっていたというわけだ。
はっきり言って、はらわたが煮えくり返る思いだが、今さらどうすることもできない。

無言で天井を見上げていると、平静そのものの様子で、少年が言葉を続けた。
「でもよかったじゃない、瑞希さんが死んでなくて。
 これで彼女のありがたみが、君にも改めてわかったでしょ?」
「…………」
「愚か者は、それを失うまで自分が大事なものを持っていたことに気がつかない。
 君も今の自分をもう一度見つめ直して、今、自分が持ってるものを大切にするんだね」
「黙れよ、畜生……」

こんなやつに説教されるのは腹が立つ。俺はゴロンと横になって目を閉じた。
眠ってしまえばこいつの綺麗な顔を見なくても済むし、よく透る声音も聞かなくて済む。
まるで聞く気のない俺の耳を、あいつの声がくすぐり続けた。

「自分の見ているもの、自分の周りにあるもの。それはホントにそこにあると思う?
 ひょっとしたら、そこにあると君がただ思い込んでるだけかもしれないよ」
「うるさい、もう帰れ……」
「大事なのは全てを疑うこと――隣人も常識も、そして自分自身でさえも疑うこと。
 信じることは難しいけれど、疑うことはそれ以上に難しいものなのさ」
「…………」
「じゃ、僕はそろそろ帰るとしよう。今回は楽しませてもらったよ、ありがとう。
 ああ、最後に一つだけ。ちゃんとお礼はさせてもらったから、後で確認しといてね」
その言葉と共に、部屋の中から一つの気配が消えて失せた。

俺はうっすら目を開け、横で寝ている瑞希の寝顔を眺めると、
「くそ……」
その一言だけを吐いて、力尽きて寝床に横たわった。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 

あれから数日が経った。
あの少年に騙されていた俺と、やはりあの少年に操られていた瑞希。
二人揃ってオモチャにされて、もてあそばれて、
まさに散々な目に遭ったが、これでようやく全てが元通りになった。
俺と瑞希は日常を取り戻し、幼馴染、兼、恋人同士として楽しくやっている。
だが、たった一つだけ、あの事件が起きてから変わったことがあった。
それは俺たちを取り巻く家庭環境、つまりは家族のことだった。

俺は座り込んだまま、瑞希の背中に手を回し、幼馴染の細い体を締めつけた。
少女の裸体と胸をひっつけ、唇と唇とを重ね合わせる。
唾に濡れまくった唇と舌が絡み合い、ぴちゃぴちゃと淫らな音を立てた。
鼻で息をしながら、俺たちははあはあ言って、お互いを求め合っていた。

「ん、んんっ、祐、ちゃ――」
「んっ……瑞希、動くぞ。いいか?」

それだけを聞き、相手がうなずいたのを見てまたキスを交わす。
飢えた野良犬を思わせる下品なディープキスをしながら、繋げた腰を突き上げた。

「んんっ、んむぅっ……!」

瑞希はあぐらをかいた俺の上に向かい合わせで座り、奥をゴリゴリかき回されていた。
ただでさえ小柄なこいつの中に、対面座位で俺のモノを深々と突っ込んでいるのだ。
そのキツさも締めつけも、半端じゃない。
両手で瑞希の腰をつかみ、叩きつけるように自分の腰を跳ねさせる。

「んぶっ、ふぐぅっ、んんんっ!」

かなり辛い姿勢ではあるが、瑞希は俺の動きにびくびく反応し、
繋げた口から俺の中へと唾を吐き散らした。それが俺の唾液と混ざり、二人の口内で一つになる。
むせてしまいそうなほど濃厚な、俺と瑞希の混合液。
その汁を半分だけ自分の喉に流し込み、残りをこいつに送り込んでやると、
瑞希は酸素不足に喘ぎながらも、それをごくんと飲み干した。

「はあ、はっ、ふぁっ、はあっ……んっ、がふっ!」

飲み込んだ瞬間に膣を派手にえぐったから、唾が喉に引っかかったかもしれない。
俺は瑞希と抱き合った姿勢で、一旦動きを止めた。
そしてコホコホ咳込むこいつの背を撫で、優しくさすってやる。

「けほ、けほっ……ゆ、祐ちゃん……!」
「すまんすまん。今のはちょっとやり過ぎた」

背中の次にツインテールの頭を撫でると、瑞希の機嫌は直ったようだった。
熱を帯びた性器を繋げながら、二人して笑い声をあげる。
俺は気を取り直し、瑞希の腰を抱えて再び動き出した。

「んっ、んああっ……あっ、ああっ」
裸の瑞希を揺さぶり、俺は結合部をグチュグチュかき回した。
俺だけが動くのではなく、瑞希も懸命に腰と太ももをすりつけ、身体を溶け合わせてくる。
深く深く瑞希を貫く、膨張しきった俺の肉棒。
好きな女の肉と汁とに包まれるこの感触が、本当にたまらない。

瑞希が俺の体に両腕を回し、きつく密着してきた。
小柄でか弱いこいつの一生懸命の抱擁に、つい俺の頬も緩んでしまう。

「はあっ……祐ちゃっ、祐ちゃっ、ゆうちゃあん……」
扁平とすら言える胸――完璧な貧乳を俺の胸板に押し当てて、上目遣いに俺を呼ぶ。
情欲に歪んだ眼が嬉し涙でにじんで、開いた口からよだれを垂らす。
その唇の隙間からチロチロのぞく赤い舌に、俺は無言でむしゃぶりついた。

「んんっ、あむっ、んっ、んぐうっ!」
再びの、もう何度目かもわからないキスに、二人の呼吸が荒れる。
極上のタンと、それにかけられた雌のソースを、俺は心ゆくまで味わった。
瑞希の上の口は俺の舌をくわえ込み、舌と唾とを絡めてくる。
下の口は俺の陰茎をくわえ込み、ヒダと汁とを絡めてくる。
上下共に繋がった俺たちは、男と言わず女と言わず、お互いを求めて貪り合った。

背中をぐんと伸ばして俺の接吻を受け入れる瑞希が、胎内をかき回され、また跳ねる。
「んっ! んぐっ、んんんんっ、んんっ !!」
面子も羞恥もかなぐり捨てて喘ぎたいのに、口を塞いだ俺がそれを許さない。
瑞希の身体を腕で締めつけ、俺は腰の筋肉を駆使してこいつの中を暴れ回った。

肉をかき分け、奥を突きまくる、乱暴すぎる俺の動き。
一つになった唇からは、荒い呼気と唾液とが、絶え間なく俺に送り込まれてくる。
目はトロンとして理性を失い、陰部と口は本能のまま、俺をつかんで離さない。
そして肉欲に狂った一人の女、一匹の雌が、盛大に絶頂を迎えた。

「んんんんっ !! ん、んふっ、ん、んんっ……!」
俺に抱きついた瑞希が震え、膣内を激しく絞り上げた。
雄に射精を促す雌の喜びに、声にならぬ声をあげて全身が痙攣する。
幸せそのものの瑞希のイキっぷりに俺も限界を迎え、尿道を解き放った。
待ちかねた数億匹の精子の群れが、幼馴染の女性器の中にドクドクとぶち撒けられる。
心地よい射精の快感に俺も満ち足りて、痛いほど瑞希を抱きしめていた。

「はあ、はあ、はあっ……」
「んんっ、はっ、はあっ、ふうっ……」
重なり合う男女の呼吸がまた、俺と瑞希を安らげる。興奮と達成感と、この上ない満足感。
互いにイった後も、俺と瑞希はしばらく抱き合っていた。

そこに横からかけられた、穏やかな女性の声。
「終わったかしら? ふふ、お疲れ様」
振り向くと、エプロン姿の小柄な女の人がバスタオルを手に、すぐ近くに立っていた。
今、俺と性を交えていた女によく似た、落ち着きのある大人の女性。瑞希のお母さんだった。

「すいません、ありがとうございます」
俺は瑞希の中から己自身を引き抜き、礼を言ってタオルを受け取った。
抜けた拍子に、また瑞希が軽く喘いで達してしまったのは、まあご愛嬌と言えよう。
陰部からとろとろと女汁を垂らして俺を見つめる幼馴染の姿は、ヤバいほどエロい。

瑞希のお母さんはそんな俺たちを見つめ、感心した声で言った。
「それにしても瑞希、すごかったわねえ。何回くらいイっちゃったの?」
「え、えーと……何回だろ……覚えてないや」
「ふふっ、あんまり気持ちよさそうだから、思わず見とれちゃった。
 祐介君、こんなぼーっとした子の相手してくれて、いつもありがとう」
「いや、別に礼を言われることじゃ……」
俺は汚れた身体をタオルで拭きながら、少し疲れた声で言い返した。
あいつがそう仕組んだこととはいえ、小さい時から慣れ親しんだこの人に、
こんなことを言われるのはやっぱり違和感がありまくる。まあ仕方のないことではあるんだが。

瑞希のお母さんは、やはりこいつの血縁らしく童顔で、少女のように可愛らしかった。
しかもおっとりした性格をしてるから、なおさら若く見える。
瑞希とよく似た女性が、もう一枚バスタオルを取り出して、
男に汚された娘の身体を優しく拭いてやっているさまは、俺に不思議な興奮をもたらした。

きちんと後始末をする俺に目をやりながら、瑞希のお母さんがつぶやいた。
「あら、また今日も避妊してたの? 祐介君って、やっぱり真面目ねえ」
そう。俺はきちんとゴムをつけ、瑞希が妊娠しないよう気を遣っていたのである。
あのとき、俺は瑞希とゴムもつけずにひたすら生でやりまくったが、
結局俺の種が実ることはなく、瑞希は今も健全な女子高生ライフを送っている。
だがお母さんの言い方は、感心するというよりは残念がる感じだった。

小さくため息をついて、お母さんがぼやく。
「あーあ、でも早く孫の顔が見たいわ。祐介君、そろそろ本気で作っちゃわない?
 祐介君だったらいつでも大歓迎だから、ゴムなんて使わないで
 思いっきりこの子に種つけしまくってもいいのよ?」
「お、お母さんっ!」

高校生の娘を早く孕ませろと、その彼氏に催促する母親。
かなり常識外れの発言だが、今のお母さんにとっては、それが当たり前のことになっていた。
もちろん、あの少年がお母さんに術をかけて、このような思考に誘導したからである。
だからこうして、お母さんが夕食の準備をしている間に
隣で俺が堂々と瑞希を犯していても、文句一つ言われない。むしろ応援される。

ちなみに同じ処置は、瑞希のお父さんと、俺の両親にも施してあった。
だから俺と瑞希は、毎日お互いの家でやり放題だ。
まだ高校生なのでさすがに避妊は欠かせないが、もし仮に瑞希が妊娠してしまったとしても、
瑞希の両親もうちの親も、みんな大喜びしてくれるだろう。
まだ結婚できないというのに、早く初孫をと、こうして日々せっつかれている。

人の記憶と認識を操る力を行使していた、あの謎の少年。
今のこの状況が、あいつの実験台になった俺たちに支払われた報酬というわけだ。
高いのか安いのかわからんが、お互いの家で親の目を気にすることなく
セックスのし放題というのは、年頃の俺たちにとって、確かにありがたい話ではあった。

瑞希に服を着せ終わると、お母さんは俺たちに告げた。
「じゃあ二人とも、そろそろご飯にしなさい。頑張って作ったから、たっぷり食べるのよ」
「はい。ありがたくご馳走になります」
やりまくっていたので気づかなかったが、隣のダイニングには夕飯のいい香りが立ち込めていた。
瑞希が俺の隣で腹を小さく鳴らし、恥ずかしそうに顔を伏せる。
今日の瑞希んちのメニューは中華で、ボリュームのあるチャーハンと唐揚げが非常に美味かった。
あいにく瑞希のお父さんは今夜遅くなるとのことだったが、
三人で囲んだ夕飯の席は、娘に対するお母さんの詮索でかなり盛り上がった。

そして今夜、宿泊の許可を頂いた俺は、瑞希の部屋で寝ることになった。
狭いあいつのベッドにもぐり込み、二人でイチャイチャ。
抱き合ったりキスしたりして、ついつい夜更かししてしまったが、
こういうとき、今の自分が本当に幸せだと感じる。

瑞希が死んだと思ったとき、気が気じゃなかった。
俺はこんなにもこいつのことが好きだったのかと、今さら気づかされた。
小さい頃からずっと一緒だった幼馴染で、今は大事な恋人で。
もう二度とこいつを離すつもりはない。もう二度と手放さない。

はらわたが煮えくり返るようなことをしやがったあの少年だが、
あいつのおかげで、俺は自分自身を見直すことができた。何よりも大事なのは瑞希だと、
何よりも優先すべきは瑞希なんだと、改めて思い知ることができたんだ。
その点だけは、素直にあいつに感謝したい。
瑞希、お前は俺が守る。絶対に、誰からも何からも守ってみせる。
そうだ、全ては俺と瑞希のためにある。

そんなことを考えていたら、眠たくなってしまった。
とりあえず今日は寝て、明日のことはまた明日、ゆっくりと考えよう。
焦る必要はない。何よりも大切な瑞希は、今、俺の腕の中にいるのだから。
大事な女と一緒のベッドでまどろみながら、俺はそっと自分の意識を手放した。
だから、その後に俺のすぐ近くから聞こえてきたやり取りを、俺は聞くことができなかった。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 

「やあ瑞希さん。まだ起きてるのかい?」
「あ……来てたの? 祐ちゃん、起きちゃわない?」
「大丈夫さ、王子様はぐっすりおやすみだ。君の方は眠れないの?」
「う、うん。祐ちゃんと一緒だから、その、嬉しくって、なかなか眠れなくて……」
「あはは、それはよかったね。その様子なら、僕も一肌脱いだ甲斐があったってものだよ」
「本当にありがとう。私を祐ちゃんの一番にしてくれて……」
「礼には及ばないさ。僕も充分楽しめたからね。それより君こそ、本当に良かったのかい?
 今の祐介君は君への執着が強すぎて、ちょっとばかり歪んじゃってるけど」
「ううん、いいの。祐ちゃんはちょっぴりドライだから、このくらいがちょうどいいの。
 あれから祐ちゃん、ずっと私だけを見てくれてるんだもん……やっぱり嬉しい」
「はっはっは、そうかい。君はホントに祐介君が好きなんだね。
 今みたいに彼の心をいじくって、無理やり自分に縛りつけても後悔しないんだもの」
「もう、そんな言い方……」
「まあ、また何かあったら相談してよ、待ってるからさ。それじゃ、おやすみ」
「うん……おやすみなさい、魔法使いさん」
「…………」
「祐ちゃんも、おやすみなさい。
 今日も、明日も、明後日も、ずっと私のそばにいてね。私の祐ちゃん……」