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2chの「MC・催眠系総合スレ」をまとめてます。
鈴の音で魔族を催眠 - 2chMCスレッド

鈴の音で魔族を催眠

 ちりちり~~ん……

 小さな金属同士がぶつかり、反響し合う微かな音で目が覚めた。
 「うふふ、思った通りです」
 なにやら嬉しそうに呟く少女らしき声に導かれるように顔を上げると、予想に違わず小柄で幼さを
残した少女が優越感で輝く目を細めながら自分を見下ろしていた。
 背中の辺りまで伸ばした艶やかなブラウンの髪は綺麗に梳かれ、色白な頬には傷一つ無く、髪よりは
少し濃い茶色の瞳小さな唇も生気に満ちていて健康そのものっぽい。
 年の頃なら……定命の種族の年齢は良く分からないが、戦場で散々焼き払って連中と比べて遙かに
背が低く、何重にも着込んでいるらしい重そうな服越しでも分かるくらい身体は華奢で、物腰からも
纏う雰囲気からも鋭さは感じられず、何処から見ても無防備で隙だらけ。
 つまり、弱っちいメスのガキだ。
 なのに自分を見下ろす自信たっぷりな瞳からは、得体の知れない何かを感じる。
 あれは勝者の笑みだ。
 幾つもの戦で培ってきた経験が警鐘を鳴らしている。
 あれに迂闊に手を出しては駄目だ。
 だからリリィは目の前のガキから目を離さず、相手の出方を覗うことにする。
 あれの方から先に喋らせよう。
 そうすれば、少なくても言葉尻を捕まえられ出鼻をくじかることは無いはずだ。


 そうしてどれだけ、身じろぎもせず視線で相手を牽制し続けたのか。
 「此処、どこだか分かりますか?」
 先に根負けしたらしいガキの方が、再び口を開いた。
 「………………」
 だがリリィは迂闊に言葉を返したりはしない。
 常に視界の片隅にガキを捉えたまま、瞳だけを動かして周囲の様子を確かめる。
 「そう、牢屋です。もっと正確に言うと地下牢です。更に付け加えると、貴女のような高位魔族を
封じる為の処置を何重にも施した特別な牢屋です。もっとも、何処の地下かまで教えてあげることは
出来ませんけどね?」
 「………………」
 なるほど、リリィは頭の中で呟く。
 薄暗い部屋は全て頑丈そうな石を組み上げられて出来ている。
 壁も天井も床も全てだ。
 そして明かりは部屋の片隅に置かれた簡素な燭台一つだけ。
 これでは『ここが牢獄である』事以外は何も知りようが無い。
 つまり、このガキはリリィが目で見るだけで分かる程度のことをわざわざ口に出し勿体ぶった口調で
教えたことになる。
 そして、それ以上の事は教えるつもりが無いらしい。
 此処がガキの言う通り地下牢なのか、本当に自分の様な高位魔族を閉じ込めておけるような処置が
為されているのかは不明だが、事実にせよ虚仮威しにせよ今は保留で構わないだろう。
 この状態で不用意にガキを焼き払おうとしたり、この牢屋を破壊しようとしたりしするということは
敵の目の前で手の内を晒すことにもなる。
 それで脱出できればまだしも、満足な結果が得られなければ更に強力に封じられる。
 なら、このガキを通して人間側の意図を探ることを優先すべきだ。
 「………………」
 そう結論づけたリリィは部屋の観察を早々に切り上げてガキの方へと視線を戻す。
 何か言いたいことがあれば早く言え、と意思を込めて。
 「ええと……何処から話しましょうか?」どうやらリリィの方から話を切り出すつもりはない、と
気付いたらしいガキは、う~~~ん、と人差し指を唇に当てながら唸った後、妙に柔らかい口調で
説明を始めた「これは私の想像なんですけど、貴女の最後の記憶ってバーダラサ平原で魔族の先陣を
きって飛び出して、空から魔法を沢山撃って私達の……つまり人間側の軍勢の前衛を足止めしながら
高笑いしている所で終わっていると思うんですけど、合っていますか?」
 実は少し違う。
 正確には魔法を撃ちまくって人間共を焼き払っていると、その爆炎の中から一人の人間が(遠目には)
無傷で魔法を突破してきたので、あれが噂に聞く勇者とやらに違いないと判断して魔法の焦点を絞り、
更に威力を高めようと両手を頭上で振りかぶりながら集中していたところまで……だと思う。
 少しだけ意識を内側に切り分け、記憶を辿ると徐々に思い出されてくる。
 「……おおよそは合ってるみたいですね。で、その続きなんですけど、実は私達は過去の教訓から
バーダラサに大群で押し寄せると、そこを任されている貴女が最初に突出して大暴れして魔族の軍勢が
戦いやすい場所まで移動するまでの時間を稼ぐ、という単調な戦い方しか選択しないという事実を既に
確認済みだったんです」
 まぁ実際有効な戦術だったんですから無理も無いですけどね、と苦笑交じりに付け足すガキ。
 「…………………」
 「そこで、私達は『わざと』勝てないながらも最小限の被害で済む攻撃を何回も繰り返して貴女の
戦い方と魔力の高さ、そしてそこから短時間でも良いから貴女を封じることが出来る魔法の種類と
威力を計算して、勇者様とお仲間の皆様にもご協力をお願いしておね……こほん、わざと横長の布陣で
攻めて貴女が側面を晒す瞬間を狙い、ピンポイントで攻撃しました。で、貴女を消滅されることこそ
叶いませんでしたが、こうして捕まえることが出来ました。そして貴女は今、こうして囚われの身に
なったと言うことです」
 「…………………」
 「私達が無駄な攻撃を繰り返し、その都度貴女達の軍勢と衝突する前に撤退してばかりなことに
何も疑問を感じませんでしたか? 貴女は魔族の中でも賢明な方だと窺っていましたけど、やはり
魔族は魔族と言うことでしょうか? 慢性的な睨み合いが何年も続いて、何時の間にか高い魔力に
頼る癖が付いて深く考えることを止めてしまったのが敗因でしたね?」
 「…………………!」
 「あ、いま、少しムッとしましたよね?」
 「…………………」
 「今度はホッペが赤くなりましたよ? うふふ、可愛い反応が見れました」
 落ち着くのだ。
 こんなガキの一人や二人、いざとなればどうとでも出来る。
 多少、揶揄された程度で動揺しては相手の思うつぼ。
 いまは冷静に、敵を探るのだ。
 「で、ここで一つ確認させて頂きたいんですけど貴女は魔王の子供の一人、しかも最初に生まれた
第一王女のリリィさんで間違いないですか?」
 「…………………」
 「その程度は教えて頂いても構わないと思うんですけど? 貴女が誰なのか確認しないとお話し合い
になりませんよ? 貴女だって、ずっとこのままで良いとは思っていないでしょう?」
 「…………………」
 「あ……最初にも言いましたけど、この牢屋は特製ですからね? ここで自決なさっても魔力に
還元されて魔王の元に帰ることは出来ませんよ? なんとか情報を引き出して自力で脱出しない限り、
魔王の魔力は貴女を生み出すのに使った分だけ減ったままですよ?」
 「…………………リリィで間違いない」
 これもはったりである可能性はあるが、そうではない場合を想定すると、これからの駆け引きを
踏まえ自分が魔王の長女であると認めるデメリットは大きいとは言えない。
 なにせ、リリィの父である魔王は人実交渉などには絶対応じない。
 そもそも自らの魔力を分け与えて生み出した自分達のことを、他よりも芸が多い使い魔にしか
考えていないからだ。
 「やはりリリィさんでしたか! 私はイレーヌです、よろしくお願い申し上げますね?」
 「………………ふんっ!」
 当然、よろしくお願いするつもりなど毛頭無い。
 「そんな、これ見よがしにそっぽを向かなくても良いと思……」
 「人間と馴れ合うつもりなんかない!」
 ぷいっ、と横を向いたままイレーヌの言葉を遮るリリィ。
 「それは……そうでしょうけど……」はぁ~、と溜息を漏らすイレーヌ「……でも少し考え直して
くれませんか? 私はともかく、他の人達は拷問してでも……って息巻いてますよ?」
 「そ、そんなの全然怖くない!」
 「……いま、少し声が震えませんでしたか?」
 「震えてない! 人間の武器なんて通じない!」
 低俗な連中ならともかく、リリィほど高位になると身体の強度が桁外れに高くなり普通の斬撃や
打撃はもとより、火や聖水も殆ど通用しなくなる。
 更に幾つもの魔力障壁を無意識に張っているので、そも生半可な攻撃が身体に届かない。
 もっとも高位な魔法や神器レベルの武器なら話は変わってくるのだが、それを丁寧に教えてやる
つもりは無いし、それらが全て各地の前線に散らばっているのは確認済みだ。
 「それは、もしかしてリリィさんのエッ……独特なお召し物の事でしょうか?」
 「………………」
 「やはり、そうなんですね? 空から落ちて気を失っているリリィさんを確保しようとしたとき、
着ている物はボロボロになっていたのに身体は軽い火傷程度の傷しか無くて、しかも見る見る元に
戻ってゆくのを見たときに『これは強力すぎる魔力が物質化した物かも?』って思ったんですけど、
やっぱりアレがリリィさんの全身を守っていた訳なんですか、なるほどです!」
 「………………」
 弱っちぃ癖に察しが良いガキだ。
 イレーヌが指摘する通り、リリィの身につけているの衣服は魔力障壁の一部。
 その物理的強度の高さ故に、半ば物質化し身体にフィットした薄着のように見えている。
 「しかも意識が無い状態でも元に戻ると言うことは……無意識下の余剰魔力だけでも障壁が
形成出来ると言うことに……ううん、むしろ本能的に反応して……」
 「………………」
 「……つかぬ事をお伺いしますが、リリィさんの障壁ってリリィさんの意思で外すこととか
出来たりするんですか? それとも自分でも制御できないとか?」
 「………………」
 勿論出来るが、そんなことを教えてやるわけが無い。
 この障壁は物理的な防御力のみならず、幻覚や精神操作と行った魔法全般からリリィを守る
役目も持っている。そして実際、ガキがあれこれと詮索してくることから察するに、リリィが
意識を失っている間にも人間共は色々な魔法をリリィを試したのだろう。。
 が、どれも効果が無かったので目を覚ますまで待ったに違いない。
 多少は知恵が回るガキだと思ったが、所詮は定命の種族。
 リリィが不機嫌そうに口をつぐんでいるだけで、ぺらぺらと情報を垂れ流してくれる。
 「って言っても、そう簡単に教えて頂けるわけはないですよね?」
 「………………」
 ふむふむ、と腕を組んで一人で勝手に納得しているガキ。
 「では……仕方ないですね。リリィさん……いえ、リリちゃん?」
 「?」
 「その服、全部脱いじゃって下さい。これはご主人様の命令です」
 リリちゃん?
 ご主人様?
 目の前のガキが訳の分からないことを言い出した。
 何を仕掛けてくるつもりなおか知らないが、こんなガキの魔法なんか……

 ちりちり~~ん……

 「!!?」
 しゅぅぅぅ……と微かな音共にリリィの全身が冷気に包まれてゆく。
 いや、違う。
 「…………え? な、なに? なんで……!?」
 全ての障壁と共にリリィの服が勝手に魔力に分解され、周囲に霧散してゆく。
 急いで体内の魔力を放出して再構築しようとするが、
 「出来ない!? 出来ない!!」
 放出は出来ても収束しない。
 胸元から始まった分解が臍の辺りまで、更にその下まで見る見る広がってゆくが、
リリィには為す術もない。
 「あ、こら! 動いちゃ出目ですよリリちゃん? これもご主人様の命令です!」
 
 ちりちり~~ん……

 反射的に手足を動かし、露わになった部分を庇おうおするが、ガキの一言で身動きも
出来なくなる。
 「!!」
 アレか!
 何時の間に取り出したのか、リリィを見下すガキの右手には金色に輝く小さな鈴。
 見たとも無い物だが、きっと神器クラスの魔導具と考えて間違いない。
 「………………」
 もっとも、今更分かったところで文字通り手も足も出ない。
 悔しそうに歯を食いしばるリリィは、瞬く間に全てを露わにしてしまう。
 「うふふ、やはり魔力も物理エネルギーも介さない単純な催眠術なら高位魔族の守りでも
素通りしちゃうんですね。他愛ないです」
 勝ち誇ったように目を細め、満足そうに微笑むガキ。
 「サイミン……ジュツ……?」
 「聞いたことも無い言葉でしょう? でも、知らなくても恥ずかしいことじゃないですよ
リリィさん? なにせ、この世界では『まだ』確立されていないようですし」
 「…………………」
 「無理して覚える必要もありませんからね? ただ、これから私の命令には絶対に
逆らえないって言う事実だけ理解して頂ければ、ね?」
 拙い、非常に拙い。
 全ての防備を失っただけでも十二分に拙いというのに、身体の自由まで奪われた。
 ガキの言っていることはサッパリ分からないが、あの神器にリリィの魔法を完全に分解して
身体の動きさえ制限する力があることだけは疑いようも無い。
 まだ思考までは制限されていないことから察するに、精神面まで支配力を及ぼすことは
出来ないと……いや、まだガキが奥の手を隠していないとは限らない。
 「あらあら、エッチぃ服がなくなっちゃうと印象も変わっちゃいますね。さっきまでは、
私と変わらない年頃に見えるのに色っぽいって言うか……少しオトナな雰囲気の方だなって
思ってたんですけど、裸になったら普通の女子ですね。可愛らしいです」
 「…………………」
 歯を食いしばって睨み返すが、どうにもこうにも落ち着かなくて視線に力を込めることが
出来ない。
 「それに、こうして改めて見てみると……背丈は私と変わらない……いえ、リリィさんの
方がちょっとだけ低いかも? それに発育の具合も少し……」
 「~~~~~~~っ!!」
 動けないリリィを小馬鹿にするように近づき、右へ左へと身体を揺らしながらリリィの
裸体を検分して楽しそうに揶揄するガキ。
 「むしろ私の方が胸も少し大きい……ですよね? それに下の方も……ですし、こうして
見れば見るほど子供っぽくて可愛らしいです。もう全然怖くありませんね」
 その小生意気な笑みごと今すぐ灰も残さず焼き払うか、首から上を粉々にしてやりたいが、
指一本すら自由に動かせない状態では魔法も使えない。高位魔族故に腕だけでも振るえれば
強力な術も無詠唱で放てるのだが、逆に言えば他の方法では魔法が使えない。
 必要が無いので魔法を呪文で発動させた経験も無ければ、視線だけで焦点を合わせて
魔力を収束させることも出来ない。
 ちょっとした衝撃波程度なら使えるかも知れないが、それすら予備動作無しでは普段通りの
威力が出せる自信が無い。
 というか、一度として脱いだことも脱がされたことも無い魔力障壁の服を残らず奪われ、
晒したことの無い素肌が外気に触れる肌寒さに身体の内側まで徐々に蝕まれ、感じたことの無い
喪失感に見舞われたリリィは気力の殆どを削がれてしまっていた。
 「う……うぅぅ……」
 情けなさの余り、食いしばった歯の間から微かな嗚咽を漏らし、必死に強気を装う瞳を
僅かに潤ませてしまうリリィ。
 そんな様子に、ほんの一瞬、躊躇を見せたイレーヌだが、
 「ど、どうやら御自分の立場を理解して頂けたようですし、時間も推していますので、
そろそろ『実験』を始めさせて頂きますね、リリィさん?」
 そう宣言するイレーヌの少し固い笑顔に、リリィは生まれて初めて戦慄を覚えた。
 一般的に『魔族』という呼称で一括りにされがちな化け物達、つまり圧倒的多数を誇る人間族を
初めとする『人族』の主敵であり天敵である異形の存在達は、実際には全く平坦な軍勢という訳では
ない。
 まず、魔族領と呼ばれる地域で何らかの影響を受けた動物が変化したと思しき『魔獣』
 次に魔獣が進化、或いは更なる変化を経て知力、身体能力共に飛躍的に強化したらしい『魔族』
 この二種だけでも人族を大幅に凌駕する、恐るべき脅威ではあるのだが、魔族には更なる上位種が
存在する。
 それが魔族軍の指揮官クラス。
 未だ前人未踏で大雑把な地形すら把握されていない魔族領の深部、
 活火山帯であるストガラ火山群の向こう側に鎮座し、居ながらにして全ての『魔族』を従えていると
言われている『魔王』が、自らの魂の一部を分け与え凝縮させて誕生させたと伝えれる、一握りの
高位魔族である別名『魔人』。
 確認されている限り、何故か全て美しい少女の形をしている彼女ら『魔人』は正に一騎当千。
 一撃で森を焼き払い山を砕くほどの魔法を雨霰と降らせ、
 剣や盾、鎧までもを一刀両断する武具と共に風よりも早く戦場を駆け回り、
 十本の槍で突こうが百本りの剣で切りつけようが千本の矢で射貫こうが傷一つ付かず、
 全ての人族の言葉を操り方々で人心を砕きつつ、魔族の軍勢を手足のように従え指揮し謀略を
巡らせて前線という名の事実上の国境を徐々に前進させている。

 一方の人族も、己が領域を大量に削り取られる光景を眼前にしてようやく積年の確執や種族の差異を
一時的に棚上げし、それなりに歩調を合わせながら反撃を開始したものの、この数百年にも及ぶ戦争の
当初の勢力図と現在のそれを並べて比べたところで、その縮図の外輪が多少歪んだ程度。
 味方を蹂躙する魔人に対抗すべく、戦後の思惑まで捨ててそれぞれの最精鋭である『勇者』達を
投入する決断を下したところで、ようやく『一進一退』に持ち込んだというのが現状である。
 そして魔族の中でも、恐らくは魔人の中でも最高位に位置するであろう魔王の長女。
 最強の勇者と一騎打ちに持ち込めたとしても、良くて相打ち。
 大軍を魔族領へ進撃する為には絶対に必要な平原『バーダラサ』を預かる猛将。
 そのリリィを捕縛し、ほぼ手中に収めたイレーヌは、ここにきて躊躇していた。
 皇国魔法学院設立以来の最年少にして最優秀の神童、という評価の後押しと精密緻密な作戦の
立案と実戦参加。
そして目標の無力化は出来たが消滅は失敗という、計算通り期待通りの結果。
 かくして理想的な状況まで漕ぎ着けたのだが、最後の最後でイレーヌ自身が危惧していた
自分自身の内面的弱点が首をもたげてきたのだ。

 ど、どうしよう? なんて、凄い最悪感が……

 魔族は何百年にも渡って数え切れない人命を奪ってきた大罪人。
 その本質は邪悪そのものであり、そも人族とは相反する存在。
 互いに殺し滅ぼし合うかしかない絶対的な敵。
 その常識というか価値観は幼い頃から繰り返し叩き込まれ、既に人格の一部と言っても良い。
 が、それ以前から長年教え込まれてきた、もう一つの道徳感の方が僅かに強かった。
 「じゃ、じゃあ始めますからね? ホントのホントに始めちゃいますね?」
 「…………………」
 くっ殺せ、とばかりに涙目で睨み返してくるリリィ。
 こうして間近で観察してみると(肌が褐色だったり、耳が尖ってたり頭から山羊みたいな小さな
角が生えてたりする以外は)中学生くらいの普通(?)の女の子であり、は虫類みたいな瞳は涙で
ウルウル潤んでるしお尻の辺りから映えてる漫画の悪魔みたいな尻尾は縮んで丸まってるし、
催眠術で動けないはずなのに小刻みに震えてるし、見るからに痛々しい。
 「え、えっと……」
 討伐は成らず、されど捕縛せり。
 その報告を受けた国王と、連合軍使節達の出した結論は『イレーヌの秘術とやらで昏睡状態を
維持できるなら手を出すな、出来なければ殺せ』だった。
 それを作戦での功績と、秘術と称した催眠術によるリリィの無意識状態維持の実績でゴネ倒し、
自分であれば魔人の弱点を探れるかも知れないと力説して、ついでに反則級のコネまで動員して
幾つかの条件付きで最強の魔人を独占する期待を得たわけだが、
 「……えっと、ですね……」
 そんな顔をされてしまうと自分の方が極悪人のような気がしてきてしまうのだ。
 正直、魔人の生(?)態は謎というヴェールに完全に包まれている。
 他の魔族を討伐して時は只の獣に戻ったような死骸や、そうでなくても最低限骨格部分だけは
残る物なのだが、魔人だけは違う。
 ほんの数例だが、過去に撃破された時には肉片一つも残さず消えてしまったそうだ。
 そして、その時の膨大な魔力の流れから察するに、彼女らの肉体は全て魔力で構成されており、
完全破壊されても魔力に還元され魔族領に何処かにの元に戻るのだけでは無いだろうか、という
推察が生まれ、そこから『元は魔王の一部では?』という説が成り立っていた。
 これについては、先ほどのリリィの反応から事実であろうとことが確認できたが、なら彼女らの
肉体は何処まで『肉体』なのだろうかという疑問が生じる。
 血は?
 内臓は?
 脳は?
 本当に物理的な存在なのか?
 睡魔は?
 疲労するのか?
 飢餓には襲われるのか?
 無縁だとすると、無尽蔵の魔力の発生源は?
 彼女らが半端なく強すぎる為に、調べようという発想自体が今まで存在しなかった。
 件の討伐例ですら、四肢や胴体を両断した訳ではなく問答無用で木っ端微塵になるほどの打撃を
与えていただけなので、なんの検証も行いようが無かった。
 今回のように消滅しない程度のダメージで昏倒させ、しかも秘術によって状態を維持したまま
搬送出来たこと自体が、イレーヌ以外にとって奇跡の賜だったのである。
 「あの……ホントのホントでホントに始める前に再度お尋ねしておきますけど、私の質問に素直に
答えて頂ければ痛いことは……しなくても済むんですけど……」
 「………が、がるるるっ!」
 「いえ、あの、その格好で震えながら威嚇されても全然怖くないというか……」
 「うるさいっ! チビ! やせっぽち! ばーかばーかばーかっ!!」
 「……うわぁ……」
 小学生レベルの罵詈雑言だ。
 本当に最初(=最古)の魔人なのか疑わしくなってくる。
 だが相手が年下っぽい外見の美少女でも、見た目以上に貧困なボキャブラリーしか持っていなくても
仕事は仕事だ。魔族には容赦など無用、の姿勢を崩さない大人達から降板を申し渡されない為にも
手段など選ばず何かしらの成果を持ち帰らないとならない。
 「そ、そこまで強情を張るのでしたら、ホントのホントに今度こそホントの実験をホントに始めちゃい
ますからね。謝るなら今のうちですからねホントに!」
 「べ~~~~~~っ!!」
 「……………」
 流石に今のは少しムッときた。
 というか煽り方が更に幼稚になっている。
 だが、逆に何かが吹っ切れたような気もしてきた。
 「これは……もう身体に言って聞かせるしか無いですね……!」
 いよいよ覚悟を決め、リリィの細く引き締まった体に手を伸ばすイレーヌ。
 「がるるるるっ!!」
 そして、いよいよ犬歯(八重歯?)をむき出しにして本気で威嚇してくるリリィ。
 (首から上は……下手に手を出すと噛み付かれるかも?)
 今のリリィが行使できる唯一の武器は歯だ。
 催眠術が効いてるし動けないとは思うのだが、念には念を入れて攻撃範囲は避けておこう。
 (よし、首から下の弱そうな所……弱そうな所は……)
 牢獄の冷たい床に膝を付いた、やや起伏に乏しいリリィの裸体を上から下まで、改めて丹念に
観察する。
 すると……
 「あ……」男性みたく頑丈そうな褐色の中に一カ所だけ、なんとも脆そうな薄桃色の部分を
発見した「……リリィさん、小さい上に陥没……してるんですね。ぷぷっ!」
 「がるるるる……る?」
 まるで子供のよう格好悪い部分を更に発見し、余裕が出てくる。
 「ここなら大丈夫そうです。うふふ、どんな反応を見せてくれるんでしょうか?」
 これなら下手に傷つける可能性も無く、魔人の肉体構造の片鱗くらいは見れるはずだ。
 慎重に腕を伸ばし、リリィの発展途上なバストの中心を人差し指で軽く突いてみる。

  つんつん。

 「ぴぇっ!?」
 「『ぴぇっ』?」
 「………………………」
 「いまのは中々良い反応でしたね。では、次はもう少し……」
 「っっっっっっっっっ!?」

 びくびくびくっ。

 くいくいくい、乳輪の内側に隠れた急所を軽く押し込んだだけで打ち上げられた魚のように
体を痙攣させるリリィ。
 「もしかして痛かったですか?」
 「な、なんともない!!」
 「じゃあ……感じた……とか?」
 「なんともないったらなんともない!!」
 どうやら人間同様に敏感らしいが、これでは単なる痛感なのか性的な何かを感じ取っているのか
判別が出来ない。
 「ふ~む………」
 「なんともないからなんともない! だから無駄なことはひゃあっ!?」
 今度は指二本で乳輪ごと抓み、軽く転がして刺激を与えてみる。
 外気に触れたことの無い乳首は敏感すぎて痛いらしいが、これならちょうど良い筈だ。
 「どうですか? これなら気持ち良いでしょう?」
 「ふぁ……あ、な、何も感じない……っ! 感じない……から……やめ……」
 言葉とは裏腹に、リリィの反応は快感を感じているようにも見える。
 「じゃあ、これならどうですか?」
 「ひぃぅ!?」
 バリエーションを増やし、軽く揉んだり引っ張ったりと動きに変化を混ぜながら刺激を
与え続けると、跳ねるだけだったリリィの動きが『うねる』ように変化し始める。
 「ほらほら、ほらほらほらっ!」
 「ひゃ、ひゃめ……はぅっ! はぅぅ………!」
 これはイケる、と確信したイレーヌは調子に乗って弄り倒す。
 徐々に力を込め、玩具を見つけた子供のように責め立てる。
 「どうですかリリィさん? そろそろ降参しませんか?」
 「う……うぅ……う~~っ! うぅ~~~~っ!!」
 自分の反応が相手を付け上がらせている、と気付いたらしいリリィは咄嗟に歯を食いしばり、
固く目を瞑って徹底抗戦の構えを見せる。
 「うふふ、そっちがその気なら……こうですっ!」

 ちりちり~~ん……

 「!!!」

 「さぁ、リリちゃんは次に鈴が鳴るまで私に触られて感じたことが全部言葉になって
口から出ちゃいますからね。ご主人様の命令は絶対です」
 
 ころころころ、くいくいくいっ。

 「しょんな、卑きょ……はぅ! む、むじゅむじゅすりゅぅ!」
 「『むじゅむじゅ』? もしかして、むずむずするってことですか?」
 「コリコリされると、なんかピリピリが体の中を……あ、引っ張るなぁ! そんにゃに
引っ張られたら体の芯がぴり~~~って! ぴり~~~ってひゃうあんっ!!」
 「それって、感じてるってことですよね?」
 「ぴりぴり! ぴりぴりを感じてるぅ! ぴりぴりぃ!!!」
 「いえ、あの、ぴりぴりはなんとなく分かるんですけど……」
 「ぴりぴりやらぁ! ぴりぴりらめぇ! こんなの知らにゃぃぃぃ!!」
 「つまり感じてるんですよね?」
 「体がぁ! 手も足も全部ぴりぴりぃ! 頭の中までぴりぴりくりゅぅ~!!」
 「……そ、そうですか……」
 こうして急所を刺激している自分が言うのも何だが、いくらなんでも敏感すぎやしない
だろうか? まだ片方の乳首を指先で軽く愛撫しているだけなのにだ。

 (魔族の体質? それとも個体差? いくら性感帯でも、オナニーもしたことなさそうな
子って、こんなに感じないと思うんだけど?)
 
 あるいはリリィ自信が本能的に『ぴりぴり』を快感だと認識しており、それを催眠術で
無理矢理言わされることで刺激そのものに意識が集中、結果的に一層明確になった快感に
更に意識が集中して……という共鳴効果に似た状態に陥っているのかも知れない。
 「ふみゃぁぁぁ! なんかぴりぴりが大きくなってくりゅ! ぴりぴり大きくなって
なにもわかんない! 頭の中変になるぅ! 変になる~~!!」
 「え? もうですか!?」
 初めての愛撫で速攻乳首イキとか、リアルじゃ聞いたこともない。。
 「リリィさん、本当に初めてで…………………あ」
 指先に伝わる触感が急に柔らかくなった、と思ったら豆粒のような乳首が僅かに顔を
出していた。
 その小さく幼い桜色が余りにも可憐で、
 「ふ~~~~~~っ」
 「みゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!?」
 吸い寄せられるように顔を近づけ、恐る恐る吐息を吹きかけてみたら、リリィの全身が
電気ショックを浴びたように痙攣する。
 「はぅ……はぅ……はぅぅぅぅぅ……」
 そして催眠術で固定されたポーズのまま。仰向けに引っくり返ってしまう。
 「え? あ、あれ? あの、リリィさん……?」
 「……ちから、はいらない……ぴりぴり、消えない……あついぃ……」
 「あ……あー……」

 ちりちり~~~ん……
 
 どうやらノックダウンらしい。
 流石にやり過ぎたような気もしてきたので鈴を鳴らし、催眠の一部を解除する。
 「えっと、大丈夫ですかリリィさん?」
 どう見ても大丈夫っぽく無いが、一応確認しておく。
 「はひ……はひ……はひぃ……」
 やっぱり駄目っぽい。
 不自然なポーズのまま口も閉ざさず、ときおりピクピクしながら虚ろな目で深呼吸を
繰り返すリリィ。それでも仰向けになったことで一回り小さくなってしまった微乳は
腹式呼吸で規則正しく揺れ、血色にも異常は見受けられない……気がする。
 「あらら、元に戻らなくなっちゃったみたい……ですね」
 そしてイレーヌが散々弄った方の乳首だけが半分突き出たまま。
 ちっぱいの中心で尖っているのが、なんともエッチぃ。
 まぁ、それはさて置き、
 「今日はここまでみたいですね」
 汗やら涙やら涎やら、ついでに股間と床も漏らした体液で汚して、それに気付いて
いないのか拭おうとも隠そうともせず伸びているリリィは明らかに限界だ。
 報告の方も、今日の収穫であるところの『魔族も人間と類似の痛覚らしき物を持って
いて、これも人間同様に体液を分泌する器官を複数所持している』という新発見を適当な
オブラートに包んで行えば問題ないだろう。
 なにせ実質的な初日なのだし。
 「ということでリリさんには、もう一度眠って頂くことにしましょう」
 そう呟きながら鈴を構えたところで、イレーヌは重要なことに気がついた。
 「…………魔族も裸のまま冷たい床の上で寝たら風邪を引くんでしょうか?」
 あと、どう見ても『事後』な状態の後始末は自分がしないと駄目なのだろうか、と。